新聞営業ハンドブック

新聞営業ハンドブック2020を公開します!

新聞営業ハンドブック2020=第10章《明るい未来に向けて》

1 販売現場の底上げ

2 データ活用の重要性

3 顧客リストのデータ化

労務難を克服する

5 やわらか発想が未来を明るく

1販売現場の底上げ

仕事もイメージも自らChange!

 新聞販売現場は、「きつい」「危険」「きたない」という3K職場と言われることがあります。配達は早朝であり、屋外で働くので雨や雪、猛暑など厳しい天候下で行わなければならないこともあり、「大変な仕事」というイメージがつきまといます。このような悪いイメージが労務難につながってしまうのです。良い人材が確保できなければ、配達・集金・情報提供等のきめ細かく、高いレベルでサービスの提供を行うのは困難になってしまいます。具体的には、不着や誤配の発生頻度が高い、集金時の対応が好ましくない、平等な情報提供をしていないということで、新聞販売店のイメージは、3Kにプラスして更に悪くなってしまいます。

このような悪いイメージの改善は、「今すぐ変えていこう」という積極的で前向きな考えを持って実践していく必要があります。「長年今やっているようにやってきた。だから変える必要はない」「良くわかってはいるが労務難・従業員の高齢化で対応できない」というように変える気が無い、あるいは諦めているのではないでしょうか。それでは新聞販売業界の未来は、新聞部数の減少とともに衰退していくでしょう。日本の新聞販売業界の最も優れている「個別宅配」という最大のサービスを守っていくこともできなくなります。

 そうならないように私たちは何をしなければならないのでしょう。新たにコストをかけることなく、現状の業務を少しだけ改善する事で外部から見るイメージが良くなるだけでなく、中で働く私たち自身の気持が良い方向に変化していきます。まずは、現状を見つめ、変えるべき業務をリストアップして、変えられることから変えていきましょう。

 大事なのは、上から指示をして行うのではなく、従業員一人ひとりがどうしたら良いのかを考え、全員で変えていこうという意識を持って進めていかなければいけません。私が気になった点をいくつか挙げましたので、対応できる販売店は是非実行してみてください。

① 電話応対=名乗り

 私が用事である会社に電話を架けると「お電話ありがとうございます。〇〇会社、△△です。」と相手がでます。全国いや全世界でお客様や取引先から架かってきた電話に対する応対は、ほぼこのような対応ではないでしょうか。お客様は、相手がどこの会社で誰が電話に出たのかを確認することができます。ましてやお客様がわざわざ電話を架けているのに会社名や名前を名乗らないというのは常識が無い・失礼以外のなにものでもないと思います。それでは、新聞販売店ではこの最も基本的なことができているでしょうか。残念ながら多くの販売店でできていないように思います。販売店だけではあ

りません。新聞社でも完全にできているかは疑問です。

 このような電話での応対方法は、決して小さなことと軽視してはいけません。基本的なことは出来て当たり前です。電話応対の名乗りが出来ていないとなれば、その先にある新聞の契約、配達、集金、情報提供、その他の販売等すべての仕事に対する信頼が損なわれます。電話応対の名乗りをする・しないは、販売店規模の大小ではないことも付け加えます。すべての販売店で行ってこそ新聞社全体でしっかりと名乗りが出来ているとお客様に印象付けられるのです。もっとも、電話応対の名乗りができていない業界があるとは思いませんので、できていてもお客様は普通のことなので気が付かないかもしれません。できていない場合、この販売店あるいは会社、従業員はどうなっているのだろうとお客様は気分を害するのではないでしょうか。電話応対の名乗りを行い「新聞屋」と揶揄されることがなくなることを目指してはいかがでしょうか。

② 仕事上のルールを考える

新聞販売現場には色々なルールがあります。新聞配達には、「道路交通法を守る」「騒がしい音を立てない」「不着・誤配等に気をつける」「配達時間を守る」、営業には、「身分証明書を携行する」「決められた服装・見出

しなみ」「特商法で決められた通知をする(第1章3訪問販売のルール参照)」「契約書に必要事項を記入して、お客様に控えを渡す」、店内作業では、「出勤時間厳守」「適切な接客」「報・連・相」等々があります。これらのルールは、必要だから決められています。従って、「自分はこのルールは気に入らないからやらない」ということは決してあってはならないことです。

 たとえば、あなたは朝刊配達をしています。配達順路とは少し違っているが、今、向かいの路地に入って配達をすれば全体の配達時間が短くなるので順路を変えた。しかし、その路地は一方通行で逆走になってしまいます。早朝なので見つからないから良い…とあなたは判断しますか。もちろんNOです。道路交通法違反であるとともに販売店が決めた順路にも違反します。違う順路で配達すると個々のお客様の配達時間が狂ってしまいます。配達する従業員によって順路が違うので、配達時間がバラバラになるのです。

例えば、正しい順路 では5:00に配達されるお客様

から、「時々4:00に配達されるので毎日その時間に届けてくれ」と要望されたら対応できるでしょうか。路地を逆送する道路交通法違反をしなければ対応できません。販売店としては、それを認めるわけにはいきません。一人の従業員の勝手な判断で行った順路変更が、販売店の信用を落としかねない

事態に発展してしまいます。仕事上のルールを守るのは、社会人として基本中の基本です。仕事上のルールは守って当たり前と肝に銘じて仕事をして下さい。それができないのであれば、他の仕事を探した方が良いでしょう。もっとも、その仕事でもあなたは必要とされないでしょうが…。

③ 報・連・相は何のためにあるのでしょう

 新聞販売店も規模の大小はあれ、一つの会社です。会社である以上、会社の代表者「社長」がいて管理職から社員、アルバイト、パートとそれぞれの立場の人達がいます。当然ですが、仕事をする上で上から下へ指示・連絡があります。それを行うのに必要に応じて相談をして、その結果を下から上へ報告する…という「報・連・相」が行われて仕事は進められていきます。

 販売会議において、今月の目標や取組み、注意事項が従業員に伝えられます。「連絡」です。その目標を達成するために作業を行っていきますが、1週間、2週間と日が進むにつれて目標と作業の進捗状況に差が生じてきます。その時点で作業のチェックをして目標達成のために何をすべきかを考えます。ここで上司あるいは社長に「相談」をする事もしばしばあるでしょう。解決策を示されたら作業方法を修正して進めていきます。1ヶ月が経過して結果がでたら上司、社長へ「報告」をして1ヶ月のスケジュールは終了します。これが毎月、四半期ごと、半年、1年、3年、5年とずっと繋がっていくのです。

 日常的に「報・連・相」を行うことで、間違いを減らし、遠回りをしないで効率的な作業を行うことができ、そして結果を出すことが

できる近道なのです。相談していれば適切な指示を受けることができ目標を出せた…という作業が、相談をしないで勝手な判断をして進めたために目標が出なかった…ということになり、あなたにとっても会社にとっても最悪な結果になってしまいます。しっかりと必要な時点で「相談」をして上司の判断を仰ぐことが大切です。

 反対に上司、社長も積極的に従業員とコミュニケーションを取り、作業の進捗状況をチェックすることが必要です。従業員に任せきりで結果が出てから指摘をするのでは遅すぎます。途中経過を見て指示を出すことが重要です。「第2章2組織人として求められるプロ意識」で説明した「PDCAサイクル」がそれです。

 たとえば、ある従業員は契約書等書類の記載方法が丁寧ではなく、不足している項目があるとします。その従業員に対しては、その都度指摘をして直させることが重要です。「第2章3書類作成は正確に」で書いたように新聞販売業界の現場で作成する書類は、手抜きされたものが6~7割を占めているように思います。これは、チェックがなされていないことが大きな原因と思います。チェックされ注意されることで従業員は初めて気が付いて、正しい書類作成が出来るようになっていきます。社長、管理職、事務員は、自分自身の仕事がある中でチェックをすることは、大変な負担ではありますが、それも役割として捉えて実行していただければ、より良い販売店となることと思います。

④ 小さなことの積み重ねが信頼を生む

 ①電話応対=名乗り、②仕事上のルールを考える、③報・連・相は何のためにあるのでしょう…は、いずれも販売店内で出来ることです。それも今日から出来ることです。販売店そしてそこで働くあなた自ら意識改革をして、「チェンジ(Change=変革)」を目指しましょう。Changeする事で、販売店の会社としてのレベルは間違いなくアップします。すでにできている販売店は、より高いレベルを目指してお客様の大きな信頼を得て下さい。そうなれば、新聞販売店のイメージは今以上に良くなります。

 すべての販売店がお客様の大きな信頼を得て、新聞販売店は、新聞社と同様に情報を提供しているマスメディアの一角を担っている会社であることをお客様に認めてもらいましょう。販売現場の底上げをして、地域に根ざした、地域から必要とされる、地域の情報センターとなることで、新聞販売業界は未来に向けて必ず生き残っていく業界となるはずです。

2データ活用の重要性

データを活用した効率的な運用

 今日の新聞営業は、どれだけデータを基に行われているでしょうか。販売店は、旧態依然と営業マン・レディー一人ひとりに任せきり。「契約は足で稼げ」「訪問件数と契約件数は比例する」などの号令をかけるのがせいぜいではないでしょうか。それでは、効率的な営業はできません。足りない人員で訪問件数を確保しようと思うと一人当たりの勤務時間を延ばさざるを得ません。早朝の朝刊配達、人によっては夕刊作業、そして販促作業と1日の勤務時間が長時間になり、疲れも溜まってしまいます。益々労務難を引き起こす要因になってしまいます。もっと効率の良い営業方法はないでしょうか。

 新聞の営業は、現場で行う訪問営業を基本にしていますが、新聞社で行う増紙キャンペーンや読者サービス、イベントなど色々な取り組みが行われていて、その申込みや受付ではお客様の様々な情報を得ることができます。それらの情報を新聞の販促に活かすことはできないでしょうか。他業界であれば、当然収集した情報をデータ化して営業戦略を検討する際の基本データとして活用します。新聞業界も情報をデータ化して効率的で効果的な営業を行っていく時期ではないでしょうか。

① 情報の種類

 それでは、新聞社には営業に使えそうな情報としてどのようなものがあるでしょう。

(1) 増紙キャンペーン情報

 これは、まさにキャンペーンに申し込んで新聞を購読したお客様の情報です。どのキャンペーンが効果があったのか、どのようなお客様が申し込んだのか…を分析できれば、今後のキャンペーンを企画する際に役立ちます。どの時期に誰をターゲットにして、どのような景品を付けて行うか等が計画できるはずです。

(2) 読者サービス情報

 読者サービスといっても色々あります。新聞社が行うイベントに優先的に参加できたり、お店で割引が受けられたり、プレゼント企画が掲載された情報紙が届くという会員制クラブや趣味のカルチャースクール等があります。これらに登録しているお客様の情報も「年齢」「性別」「地域」等の違いによる嗜好傾向の分析ができ、各々クラブ運営や企画に活かすことが可能です。

(3) イベント情報

 美術展やサーカス、芸能、講演会等新聞社が行うイベントの参加者の情報も今後どのようなイベントを行ったら良いかに役立ちます。

(4) 読者情報

 そして何よりも新聞を読んでいらっしゃる読者の情報が一番役立つ情報ではないでしょうか。個人情報だけではなく、地域毎の購読率や購読期間、購読紙の種類や数も役立つかもしれません。

(5) アンケート情報

 紙面改造を目的としたアンケート調査や顧客満足度を知るためのアンケート調査等色々なアンケート結果をデータ化して活かすこともできるでしょう。

(6) 総合的に管理して役立てる

 上記で紹介した情報を1箇所に集約して、ビッグデータとまではいきませんがある程度の規模を持つデータとすることで、個別キャンペーンやイベントの情報では見えてこなかった傾向や特性が発見されるかもしれません。何よりも集約したデータを販売現場で効率的な営業活動ができるようにしようというスタンスで分析を行えば、将来心配される労務難にも対応できるのではないでしょうか。

② 販売に特化した活用

 データベースを具体的にどのように販売現場で活用したら良いでしょう。

(1) 性別や年齢別、地域別の傾向を見る

 新聞購読者の性別や年齢に傾向はないでしょうか。おそらく年齢が高いほど購読率が高くなっていると推測されますが、性別や地域によって違いはないでしょうか。ある情報誌の女性購読者を分析したら、ある地域では40代の女性の率が他地域よりもやや高いという結果が出ました。この地域で営業をする際は40代の女性の優先順位が他地域に比べ上位にくるということになります。

 また、高齢者の購読率が他地域よりも高い地域は、第8章で述べた「現読維持対策」をすぐにでも行ったほうが良いのではないでしょうか。お亡くなりや入院で購読中止になる前に同居家族にも新聞に親しんでもらうという普段の作業が必要になるということです。

(2) 併読者の傾向を読む

 ある情報誌の購読者は、朝刊購読者や他紙朝刊購読者の比率が高いという傾向が出ています。この情報紙の部数を伸ばすには、まず他紙を含めた朝刊購読者から攻めるという営業戦略が組めるのではないでしょうか。

(3) イベント販売にも役立つ

 過去に〇〇サーカスを招致してチケット販売をしたとします。また、今年もサーカスを招致してチケットを販売します。過去のデータがあれば、今回のチケット販売を計画的に行えるのではないでしょうか。たとえば、前回チケットを購入した人は、どのような人が購入したのかを分析します。「小学校中学年」⇒「小学校低学年」⇒「就学前」⇒「小学校高学年および中学生」の順で対象の子どもがいる家庭で販売数が多かったとします。ということは、今回も同様の年齢のお子様がいるお宅を優先に営業をすると効果が出るということです。ここで注意するのは、前回買ってくれたお客様を優先に営業するというのは全く効果がないということに気付いて下さい。今現在、お子様は高校生や大学生、場合によっては社会人になっています。これが、美術展なら前回購入者を優先するのは正解です。年齢は関係なく、美術に興味があるお客様が購入しているからです。

 このように、イベントに合わせたデータの分析が必要になります。従って、情報も将来に役立つためには『どんな情報が必要か』ということを意識して収集しなければいけません。集める情報は活用できる情報であり、活用しなければ意味がありません。活用しない情報なら収集しないでください。活用もしない情報を収集すると現場ではよけいな仕事となり、作業効率が落ち増紙作業にも影響が出てしまいます。特に新聞社の内部報告のための情報集めは、現場を苦しめるだけです。現場目線に立った運用をお願いします。

3顧客リストのデータ化

無駄のないターゲット戦略

 ここまでの章で新聞販売現場は、労務難に直面していると書いてきました。新聞販売店業務の2本柱である配達業務と販促業務いずれにも労務難の影響は出てきます。この項では販促業務について、労務難を克服してどのように効率的な作業を行っていくのかを説明します。

 営業方法については、第4章=新聞営業の基本=で述べたとおり、お客様の情報を集めるStep1 事前準備⇒あなたが新聞の営業をしている事を認知してもらうStep2 種まき⇒お客様に新聞に興味を持っていただくStep3 育てる⇒購読のお願いをするStep4刈取り という流れになっています。Step1からStep4までありますが、ここで重要なのがStep1の事前準備です。お客様の情報をしっかりと掴んでいれば、営業の対策も立てることができます。もちろん、多くのお客様に営業を行う方が少ないお客様に行うよりも成果は出ます。

 しかし、労務難で営業を行う人数が少ない中、営業対象となるお客様全てを訪問するのは可能でしょうか。新聞営業でよく「年に1回は全戸訪問をしよう」という話を聞きます。できるならば理想です。しかし、対象となるお客様が6,000人いるとします。営業を行う従業員が3人の場合、1人あたり2,000人が営業対象です。1日あたりにすると5.4件面談する必要があります。これは365日1日も休まないと仮定していますので、実際にはもっと多くのお客様を訪問して面談する必要があります。配達業務や集金業務、情報提供などその他の業務もあります。その中でこの数を確実にこなすのは難しいといえます。

 そこで、2,000人の中で「購読契約をしてくれそうな人」がわかれば、そのお客様を優先して営業をすることができ、結果も出るでしょう。それでは「購読契約をしてくれそうな人」をどうやって見つければ良いのでしょう。多くの優秀な新聞の営業マンは、「購読してくれそうな人」を見つけると、自分用のメモや人によっては、頭の中で記憶としてお客様情報を残しているのが現状ではないかと思います。これも職人技であり、悪いことではありませんが、俗人的な情報になってしまい、販売店で共有することができません。担当者でなければ、そのお客様の情報が詳しくわからないということです。このような顧客情報の管理方法は、新聞業界だけではなく他の業界でもあることです。このような方法だと、お客様に対する評価や見込度判定を担当者だけが行うので、「このお客様は絶対に新聞は取らない」と思ってしまうと訪問しづらくなったり、訪問しても情報収集しようとする積極的な会話ができない等の障害が発生します。

 そこで、他の業界では営業をチームで行うことでこのような障害が発生しない工夫をしています。お客様の評価を1人で行うのではなく、複数の営業担当者が行うのです。1人では気が付かなかったことが別の人間が気付くということを期待するのです。たとえば、あるお客様に小学校低学年のお子様がいらっしゃるとします。Aという担当者は

独身なので、お客様に小学校の話題を振ることはありません。しかし、Bという担当者は、同じくらいの子どもがいるので小学校の話題が自然に出ます。それによりAさんが知らなかった情報をBさんが得ることができ、その情報を含めたすべての情報を踏まえて営業戦略をAさんBさん2人で立てることができます。つまりお客様の情報は、最低でもAさんとBさんの2人が共有していることになります。さらにこれを一歩進めて、販売店全体で共有することができれば、万が一AさんBさんが退社していなくなっても、他の営業マンがスムーズに担当を引き継ぐことができます。それでは、販売店全体で情報を共有するためにはどうしたら良いでしょうか。

① 顧客リスト

 営業を行う会社は、なんらかの「顧客リスト」を持っています。新聞販売店も同様で、お客様の「お名前」「住所」「電話番号」「購読紙」から始まって、優秀な販売店であれば「家族構成」「仕事」「趣味」などを把握しているでしょう。これを基に「見込度」を付けて営業戦略を立てます。

 しかし、この顧客リストの更新が手強い作業なのです。顧客リストの情報が新鮮であればあるほどその情報を活かすことができますが、配達、集金、情報提供等日常作業を行いながらの営業活動のため、得た情報を顧客リストに更新する作業を行う時間的余裕が取れないのです。そのため、自分だけのメモや頭の中の記憶に留めるしか方法が無いというのが現状なのです。だからと言って、このままの状況で良いということはありません。

 密度の濃い新鮮な顧客リストは営業戦略の強い味方となり、それは結果へと繋がります。そして、顧客リストがPCデータ化されていれば、さらに何百倍も効果的に活用することができます。

② データ化

 顧客情報をデータ化すれば色々な場面で役立つというのはなんとなくわかっていると思います。具体的にはどのように役立つのでしょう。

(1) 営業戦略の立案

 顧客毎にお客様のおかれている環境や新聞に対する考え方などを踏まえた「見込度」により、お客様へ提案する記事を選んだりお勧めするタイミングを計ったりできます。たとえば、事前に見込度別に次回訪問まで何日の間隔を開けるか…を決めておきます。実際に営業を行った後に訪問結果をPC入力すると「次回訪問日は、〇月〇日」と表示されます。複数の顧客の次回訪問日をソート(並べ替え)して、販促日に訪問する顧客を選び出すことができます。

 また、学習指導要領の改訂時期に高校生・中学生・小学生それぞれに合わせた紙面販売を計画した場合には、お子様の学年または年齢を把握できていれば、ピンポイントで営業を行うことが可能です。

 他には、高齢者向けのサービスを行っている販売店の場合、該当する世帯を抽出して営業を行うことができます。

 つまり、販売店側が販売戦略に会わせて、営業スタッフに訪問するお客様を具体的に指示することができるわけです。現在は、販促するターゲットは営業スタッフに任せて、具体的に販促指示を出すことがないのが新聞販売現場ではないでしょうか。そもそも、会社が従業員に具体的な営業指示を出せないという業界は珍しいと思います。きめ細かに従業員の行動を把握して、教育し、営業指示を出す…ということを行いたくても、販売店労務難で顧客リストの更新ができず、それらの作業ができないというのが現状なのです。顧客リストのデータ化ができれば、労務難であっても適切な作業支持が従業員に出せるようになります。

(2) PCデータ化は難しいのでしょうか

 販売店の規模にもよりますが、新聞社の協力があれば決して難しくはありません。基本となるアプリケーションソフトは、オリジナルを作るのではなく、PCに入っている表計算ソフトを使えば良いのです。そうすれば費用は「0円」です。表計算ソフトを使用するメリットは他にもあります。販売店独自の顧客リストを作ることができ、個別販売店毎の地域性や環境、事情、希望に合わせたリストを作ることが可能です。

入力するのに手間がかかるのでは? と思うでしょう。最初から顧客全てのデータベースを作ろうとすると大変です。そうではなく、1件訪問したら1件入力をしていけば良いのです。1ヶ月⇒3ヶ月⇒半年⇒1年⇒2年…とデータは蓄積されていき、自然と有効に利用できる大切なデータベースが出来上がります。

 

 

 

 

 

(3) 実際の顧客リストを見てみましょう

「第4章2リスト管理」で示した顧客リストを例にしてみます。

 これは、販売店が事前に「Cランクの場合は3週間後に訪問する」「試読獲得の場合は7日後に訪問する」と決めておいたので、PCが指示を出せるのです。このように販売店でルールを決めて運用でき、そのルールはいつでも変更することができます。  

また、訪問した「曜日」と「時間」「面談相手」が記録されるので、「決定権者」に会える曜日と時間帯が把握でき、効率的に営業することが可能です。面談率が上がれば、少人数でも面談件数が増えることになります。

次ぎに家族情報を記録した画面を見てみましょう。

 ここには、「決定権者」「年代」「学年」「職業」「趣味・嗜好」などいろいろな情報を記録することが出来ます。この情報を活用すれば、小学生向けのイベントを開催する際に小学生のいるお宅だけを抽出すことが出来ます。趣味・嗜好を見てイベントチケットや刊行物の営業が出来るかもしれません。お年寄り向けのサービスを行っている販売店であれば、お年寄りの情報を活用できます。新聞の営業には「決定権」がわかっていれば、有効な営業が出来るでしょう。

 下表のように顧客リストには、刊行物やチケットなどの販売実績を記録しておくことも可能です。

 過去の購入履歴を参考に購入の可能性の高いお宅に営業を行うことが出来ます。

 顧客情報を活用するだけではありません。スタッフの作業成果を数字で示す事もできます。

 新聞好子さんが、行った営業とその結果は、顧客リストに日々入力され蓄積されていきます。それを基に新聞好子さんの10月1日から翌年1月31日までの営業成果を見てみましょう。それが上の「スタッフ営業評価カード」です。訪問件数が43件で面談できたのは42件、面談率98%と優秀です。結果はというと契約3ヶ月以内が2件、試読が2件とちょっと物足りない感じがします。面談率が高いのに何故結果が出ないのか…訪問結果と見込度の数字を見ると「情報収集」「情報提供」に力を入れているため「見込度のランクアップ」に繋がらず、試読獲得件数が少ない…という評価が出来ます。これを新聞好子さんに伝えて、翌月からの作業計画に活かしていくことができます。一方、《販売実績》のグラフを見ると、10月、11月、1月と確実に実績を上げています。

かなり優秀な成績です。というように数字でスタッフの営業行動や結果・実績を評価することができます。スタッフの良い所を褒めて伸ばす。不得手な作業を数字で示して具体的に改善を促すことが可能になります。

 もちろん、その他にも活用方法はあるでしう。販売店が必要とする情報を得て、顧客リストで情報管理をすることで販売店の事情や状況に合ったデータ活用が出来ます。そうすることで無駄なく効率的な営業ができ、労務難を克服していくことが可能になるのではないでしょうか。

 先述したように訪問結果を1件々データ化して、ある程度のデータ量になって初めて活用できるようになります。一朝一夕にはいきません。しかし、やり始めなければデータ化はできません。是非、検討をお勧めします。

労務難を克服する
人員確保のために新しい発想を・・・

 先にデータ利用による営業面における労務難対策を示しましたが、新聞販売のもうひとつの柱である『配達』はどうしたら良いでしょう。日本の個別宅配はすばらしいサービスです。これから高齢化が加速していく中で、個別宅配は守っていきたいサービスです。個別宅配を続けていくことで新聞部数の維持もできるのではないでしょうか。しかし、この宅配こそが労務難の一番の問題となっています。つまり人がいなければ配達は出来ないということです。部数が減っている現状では、一人の配達員が配る部数が一定だと考えると、配達エリアは毎年広がっていくことになります。エリアが広がると配達時間が増加します。配達員の高齢化も進んでいます。高齢者が広範囲を配るのは難しい

とわざるを得ません。それではどうしたら良いのでしょう。

 これだ!というものは残念ながら思いつきません。しかし、なにもしないで個別宅配が維持できなくなるのを待っているわけにはいきません。わずかな可能性かもしれませんが、実現できそうなものを考えてみました。

① 初心者でも配達できる方法は無いでしょうか

 地理的条件や販売店の考えによって一人が配る新聞の部数は異なりますが、200件から300件のお宅に配達をすることを考えてみても、初心者が1日や2日で配達できるようになるとは思えません。配達方法も徒歩、自転車、バイク、自動車など様々です。それぞれ新聞の積み方などの事前準備方法もそれにかかる時間も違ってきます。それらの作業に慣れるのに一週間程かかるのは、必要な時間と考えるしかないでしょう。

 順路帳の活用は、言うまでもありません。宅配するお宅、銘柄、注意事項が書かれた順路帳無しでは、覚えるのも一苦労です。順路帳を準備するのが面倒だからと言って地図で覚えるのは、結局遠回りになります。初心者が覚えることを念頭に普段から準備しておくことが大切です。

 斬新な発想をします。タブレット端末、地図情報、GPS(全地球測位システム)を使った『電子順路帳』はいかがでしょう。タブレット端末をバイクにセットして配達に出ます。タブレット端末にはGPSが内蔵されているので、ナビゲーションシステムが稼動します。タブレット端末に表示される地図は、住宅地図です。配達する1件目のお宅だけを覚えておきます。1件目のお宅に着きました。タブレット端末の地図には、新聞の銘柄が表示されます。その指示通りに新聞を投函します。地図には、次ぎの配達先のお宅が表示されています。そこに向かってバイクを走らせます。ナビゲーションシステムが稼動しているので、バイクが移動するのに併せて地図表示も移動していきます。当然右左折や直進も地図を確認しながら配達するお宅を目指すことになります。

配達するお宅の前に着くと表示される銘柄を投函していきます。注意事項があるお宅の場合は、その注意事項も表示されます。たとえば、「必ずポストの奥へ落とす」「雨の日はパック」などです。更に宅配するお宅を誤って通過してしまったら、警告音が鳴るというのはどうでしょう。こんな夢のようなシステムがあったら、無理なく配達順路を覚えることができるのではないでしょうか。コストパフォーマンスを考えると実現にはまだまだ時間はかかると思いますが、いずれこんな時代が来るかもしれません。もし、このシステムが日本語表示だけではなく、英語、中国語、韓国語、タガログ語など色々な国の言葉で表示できれば、外国人労働者に活躍してもらうことも可能かもしれません。

 ② スモールエリアで配達

 都心部では、配達するお宅が密集しているので、狭い面積の中で多くの部数を配ることが可能です。しかし、過疎地や山間地など、家と家が離れている地域は次ぎの家、または次ぎの集落に行くのに時間がかかります。降雪地域の冬場は更に時間がかかるでしょう。また、このような地域は、現在配達をしている人が引退してしまうと、配達を引き継ぐ人がいなくなるというケースが多くあります。このような問題を抱えている販売店は多くあるのではないでしょうか。

 次のような配達方法はいかがでしょう。基幹となる道路から山間地域へ入る枝道の別れる所にあるお宅の敷地に、その山間地域分の新聞を置いておき、山間地域の配達員がその新聞を取りに来て地域内に宅配するという方法です。限られた人員で多くの人に新聞を配達するには必要な配達方法と考えます。この山間地域の配達方法をモデルとして考えてみます。まず、50軒位の新聞購読者の集まりをひとつの配達エリアと考えます。購読率を50%と考えると実際には100軒の家がエリア内にあります。地理的条件は、平地で徒歩または自転車で配達が可能な地域と仮定します。販売店が行う実際の配達部数からみると小さなエリアです。スモールエリアです。販売店は、このエリアの拠点となるお宅に50部の新聞を届けます。この地域に住む配達員が、各々のお宅へ宅配をしていきます。エリアの広さにもよりますが、1時間位の作業時間を考えています。配達員も60歳代または70歳代とシルバー世代を考えています。このエリア内で配達員が複数いても良いと思います。シルバー世代を配達員とすることは、

年齢を重ねてもまだまだ元気というお年寄りに働くやりがいを提供することにもなります。購読料については、口座引落やクレジットカード決済化を進めることで、高齢の配達員の負担を軽減できます。

 現在、地域でのつながりを重視する地域包括ケアシステムの実現を厚生労働省が目指しています。これは、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されることを目標に自治体が行うものです。新聞販売業界も何か一役を担うことはできないでしょうか。たとえば、現在も多くの新聞販売店が行っている宅配時の異常探知はいかがでしょう。新聞を配達する家に新聞が溜まっている…電気が一日中点灯している…普段出かけている時間帯に自動車がある…などの異常に気が付いた配達員が販売店を通して地域の民生委員や救急、警察等に連絡をするというシステムです。これはまさしく地域包括ケアシステムの趣旨に合致したものではないでしょうか。

 ある販売店は、早朝に近所の老人クラブと道路や公園の清掃をして、清掃が終わると参加したお年寄りが販売店でお茶を飲んで一服していきます。ここで販売店はお年寄りの要望、情報などを得ることができます。お年寄りは、地域のお年寄りと親交を深めることができます。まさしく地域の情報センターであり、清掃活動という形で直接お年寄りと触れ合っています。これも、お年寄りを地域で見守るという地域包括ケアシステムの目的と同様の活動といえるのではないでしょうか。高齢化が進むこれからの時代の新聞販売店のあるべき姿のひとつの例といえると思います。

5やわらか発想が未来を明るくする

みんなで発送・みんなで明るく

 第10章は、私の個人的考えや意見を中心に書いてきました。内容に反論や実現性が無いとお考えの皆様も必ずいらっしゃいます。そういう方がいらっしゃるということを理解したうえであえて書かせていただきました。

 私は、国家公務員として約20年霞ヶ関で行政に携わっていました。その時の教えや経験は、新聞販売という職にも活かされてきました。行政業務を経験した人間が新聞販売業を考えると、違った角度から見る・見え方が違う・別の気付きがある…など人と違う考え方が出来たと思います。その経験を基に意見を述べさせていただきました。

 最後になりますが、新聞業界はどうなっていくのでしょう。第1章で書きましたが、「インターネットが100%普及しても新聞を購読する人は『0』にはならない」というのは本心です。新聞業界と新聞販売現場には、まだやらなければいけないことが残っています。それが、この章で書いた「データ活用」「顧客リストのデータ化による労務難の克服」「最新技術を活用した個別宅配の維持」と「販売現場の底上げ(Change=変革)」です。これをやらずして諦めることはできません。これらを実行していけば、他にも気付くことは沢山あると思います。私より数段頭が良く、気付きも多く、改善策を発想できる人が多くいらっしゃるはずです。この本がそんな方達の刺激になってもらえたら幸いです。

 最後にもう一つ夢物語を語らせて下さい。紙の新聞はインターネット情報に脅かされています。これは紛れも無い事実です。しかし、インターネットに紙の新聞が取って代わられてしまうのでしょうか。もしそうなってしまったら、不便に思う人達は大勢います。そうならないための発想を新聞業界でもう一ひねりしてみましょう。

 紙の新聞を発行する全国の新聞社が各社インターネットのニュースサイトを立ち上げます(これはすでにほとんどの新聞社が実行しています)。このニュースサイトを閲覧する条件を全国の新聞社が同一にするのです。その条件とは、「紙の新聞を契約していれば、全国全てのニュースサイトが閲覧できる」逆に言えば「必ず紙の新聞を購読していなければ、ニュースサイトは閲覧できない」という条件です。ニュースサイトを有料にすると、紙の新聞は読まないで有料ニュースサイトを契約するお客様が多くなります。そうなると益々紙の新聞を読む機会を失うお客様が増えていきます。その悪循環を断つのです。全国紙でもブロック紙でも地方紙でもかまいません。希望する紙の新聞を購読すると、新聞社が運用する全国全てのニュースサイトを閲覧できるという条件です。紙の新聞離れを防ぐ大胆な発想です。これは、私個人の発想です。実現可能かどうかはわかりませんし、紙の新聞の部数減に歯止めをかけることができるのかもわかりません。しかし、何か大胆な事をしなければ、紙の新聞は「0」を目指して突き進み、衰退していくのは間違いありません。

 新聞販売に携わるみなさんの柔軟な「やわらか発想」で、この本で述べた以上の効果的ですばらしい方策を見出して実行していって下さい。それは、新聞業界の発展をもたらし、みなさんにとっても明るい将来となっていくことでしょう。

私は、紙の新聞のファンであり、サポーターであり、ブースターです。紙の新聞に明るい未来を!

新聞営業ハンドブック2020=第9章《転出・転入対策》

1 転出する方も大切な読者

2 転入にいち早く気付こう

1 転出する方も大切な読者

転出があるから転入がある

 年度替わりの3月、4月を中心に「転出」「転入」が多く発生します。新聞を読んでいるお客様が転出になると、「残念1部のマイナスだ」とネガティブな気持になってしまいがちです。しかし、転出を止めることは出来ません。考え方を切り替えて対応しましょう。

 

① 転出に必要な情報を確実に聞く

 転出の連絡は、電話や集金時に伝えられることが多いでしょう。その時、お客様からお聞きしなければならない情報がいくつかあります。

・ 転出日(引越す日)

  ・ 新聞を止める日(いつまで届けるのか)

  ・ 集金は、いつ伺えば良いのか

  ・ 引越先でも同じ新聞を読んでいただけるか

 

 以上については、最低限お聞きしましょう。集金額については、配達した日数に応じて異なります。お客様から尋ねられたら答えられるように普段から計算方法を熟知しておきましょう。

 「引越先でも同じ新聞を読んでいただけるか」をお聞きするのが、営業マン・レディーとして一番重要です。あなたの販売店ではマイナス1部ですが、転出先で読んでいただけるということであれば、転出先の販売店でプラス1部となり、新聞社としては±0部ということです。新聞社全体という大局的な視野に立った考えをしましょう。

 転出先でも同じ新聞を読んでいただくための対策を多くの新聞社が取っています。「移転キャンペーン」や「引越キャンペーン」などです。お客様にとって「自ら引越先の販売店に連絡する手間が無い」「引越した日からすぐに新聞が届く」「引越前と引越後のどちらかの販売店で1ヶ月分の購読料が支払える(※対応できない場合があります)」「配達や集金の希望を申し送りしてもらえる」「キャンペーン特典を受けられる」等々、お客様にとってメリットがあります。転出の連絡を受けたら、お客様にキャンペーンの内容を伝えて引越先でも同じ新聞を読んでいただけるように案内をしましょう。

 移転キャンペーンでは、転出時にお客様からお聞きする情報に加えて次ぎの情報も聞きましょう。

 お客様が転出するということは、あなたの管理する区域および販売店にとってマイナスです。しかし、あなたは、前述したように新聞社全体としてマイナスにならないように行動しなければならない立場です。引越先でも同じ新聞を読んでいただけるように、しっかりとお客様に働きかけましょう。残念ながら他店エリアへ転出されますが、大切なお客様であったことに間違いはありません。なにより、今まであなたの管理区域・販売店で新聞を読んでいただいていたことに感謝の気持をお客様に示しましょう。あなたが、感謝の気持を示す事で、きっとお客様は転出先でも同じ新聞を読んでくれることでしょう。

 どこかで転出が無ければ転入もあり得ません。あなたの管理区域にも転入はあります。そう考えて、転出にも適切に対応してください。

2 転入にいち早く気付こう

最初に声かけができるかがポイント

 転入してくる方を新聞の購読者にするには、いかに転入された方にいち早く購読のお願いが出来るかです。「新聞は○○新聞に決めている」と銘柄を変えないお客様は別ですが、それ以外のお客様は最初に営業をした新聞を選ぶ可能性が高いのです。他紙の営業より、先に転入してきたお客様に営業するためには、どうしたら良いでしょうか。

① 事前準備

 転入時期は、会社の人事異動や入社、大学への進学時期となる年度末から年度初め、つまり3月と4月に集中します。したがって、この時期に合わせて事前準備をして、転入に備える必要があります。

(1) 空家・空部屋を把握する

 新聞配達時、集金時、営業時、あいさつ訪問時に空家・空部屋に気が付いたらリストに情報を記入します。空家・空部屋リストには、以下のようなものがあります。

 空家・空部屋リストは販売店毎に異なるので、あなたのお店ではどのようなリストで管理しているかしっかり把握しておきましょう。

 代行配達をする人や他区域を管理している人が、あなたの管理区域の転出に気が付く場合もあります。あなた以外の人が転出に気が付いた場合でもリスト記入ができるようにしておきましょう。

(2) 転入グッズを準備する

 転入時期は新聞社としても部数の変化が大きい時期です。したがって、営業マン・レディーが転入してきたお客様に声をかけやすいように、どこの新聞社でも転入キャンペーンや転入グッズを準備しています。これを有効に使って営業をします。転入グッズの主なものは以下のとおりです。

② パトロールと情報収集

 (1) パトロール

 転入時期となる3月中旬から4月中旬の間は、集中して管理区域のパトロールをしましょう。特に週末は転入してくる可能性が高いので、1日に何回かパトロールします。できれば朝・昼・夕方の3回は回りたいものです。朝と昼は、引越と遭遇する可能性があります。夕方以降は、空家・空部屋に電気が付いていれば引越してきた可能性が高いはずです。

 もちろん朝刊配達時や夕刊配達時もパトロールを意識します。代行で配達する人も意識してください。空家だったところに自動車が駐車してあったり、表札が出ていたり、カーテンが付いていたり、意識していれば転入に気付くことができるでしょう。

(2) 情報収集

 転入情報を集めるのも有効です。ご近所の方、集合住宅の管理人さん、町内会長さん、不動産業者などから情報を集めましょう。もちろん個人情報ということで、教えていただけない場合もありますが、普段からこういう方達と世間話をしたりする「あいさつ訪問」をきちんとしておけば、こういうときに役立ちます。差し支えない程度の情報は提供していただけるはずです。

 また、転入してくる前に情報を教えていただける場合もあります。信頼関係が出来ていれば、引越してくる日にちや年齢がいくつくらいか、家族構成など貴重な情報を聞くことが出来るかもしれません。

③ =引越してきました= さあ、訪問しましょう!

 「明かりがついている」「自動車が駐車してある」「表札が出ている」=転入です。すぐに訪問しましょう。いつでも訪問できるように「転入グッズ」は携帯しておきます。

 訪問の流れは以下のとおりです。

 断られても落ち込まないでください。断られてからが営業の始まりです。あなた自身で工夫をして契約に向けて頑張りましょう。

④ =引越し中です= どうしましょう?

 引越し中に出くわしました。どうしましょう。忙しそうなので後で出直す⇒×です。

 引越し中なので忙しいのはわかっています。お客様の気持になって長話はしないで話は簡潔にします。強引に話をして断られるのが最悪です。再度訪問できる約束が出来ればOKです。できれば、日時まで約束できれば最良です。

 一番やってはいけないのが、忙しそうだから後で来ようと考え訪問しないことです。せっかく新聞を読もうと思っているお客様で、どこに連絡をしたら良いかわからないのかもしれません。また、声かけをしなかったために、その後に訪問した他紙と契約をしてしまうかもしれません。とにかく勇気を出して声かけをして下さい。そして、訪問したという足跡を残して下さい。連絡先の入ったチラシやメッセージカードなどをお渡しする、またはポスティングしてきてください。

 

新聞営業ハンドブック2020=第8章《現読者維持対策》

1 攻めの現読者維持対策

2 経済的理由

3 新聞を読んでいる人がいない・いなくなる

4 新聞を読む時間がない・忙しい

5 インターネット情報で十分

6 仕事を辞めたので必要なくなった

7 会社や図書館、近所の身内の所で読む

8 目が悪くて読めない

1 攻めの現読者維持対策

中止には2つの対策があります

 新聞を購読したことのない方に新聞を読んでいただく「新規作業」や以前購読していた方に新聞を読んでいただく「起こし作業」は、当然大切な作業です。それと同じくらいに大切なのが、現在購読いただいているお客様にできるだけ長くお読みいただくことです。しかし、入院や転勤、経済的理由等々いろいろな理由で新聞の購読が中止になってしまいます。中止連絡が来てはじめて対応するというのが一般的ではないでしょうか。

 現読のお客様の新聞1部の減を新規やお越しでカバーするのは、とても大変な作業です。インターネットの普及による新聞の減少は第1章1新聞業界の現状で説明したとおりです。これからは、ミレニアム世代の人口が上昇していきます。生まれたときにはすでにインターネットが普及していたという世代がすでに成人して、本来ならば新聞を読む立場になっていますが新聞を読むという習慣がなく、なかなかこの世代のお客様を獲得するのは困難になっています。そこで、できるだけ現読のお客様を減らさない努力が今後益々必要になってきているのです。

 

① 中止理由を整理する

中止理由を整理して、中止理由別に対策を考えてみましょう。

(1) 経済的理由

 消費税増税、所得の減収、定年退職、年金生活への移行、ローン、教育費など支出の増加や物価の高騰など様々な理由により発生します。

また、対象となる年代も年金生活者である高齢者から、住宅ローンを組む年代、教育費が発生する年代など各年代全般が対象となります。

(2) 新聞を読んでいる人がいない・いなくなる

 新聞を読んでいたお年寄りがお亡くなりになったり、ご主人が単身赴任になったり、場合によっては就職活動や受験のためにお子様が読んでいたが就職・大学が決まったなどいろいろなケースがあります。対象となる年代も幅広くなります。

(3) 新聞を読む時間がない・忙しい

 共稼ぎや仕事が忙しく出勤時間が早く、帰りが遅いという理由でゆっくりと新聞が読めないという方です。比較的働き盛り世代の家庭が対象となるでしょう。

(4) インターネット情報で十分

 ミレニアム世代から中年世代に多い理由です。しかし、最近は高齢者もインターネットを使いこなしています。若者から中年を中心として、全世代が対象となると考えた方が良いでしょう。

(5) 仕事を辞めたので必要がなくなった

 一番多いのは、定年退職を機に中止になるというものです。但し、景気動向によってはリストラや転職ということもあるので、中高年世代が中心ということになるでしょう。

(6) 会社や図書館で読む、近所の身内の所で読む

 職場で新聞を読める立場の人はあまり多くはないでしょう。図書館へも毎日行くのは大変です。新聞購読を止める口実にしていると考えられます。

また、「親の実家が近いのでそこで読む」や「孫の面倒を見ているので、必要に応じて息子の家へ新聞を持って帰らせている」なども購読を止める理由ではないでしょうか。

(7) 目が悪くて読めない

「目が悪くなって小さい字が読みにくい」という理由です。この理由は、圧倒的に高齢者が対象です。また、身体的なことなのでとてもデリケートに扱わなくてはいけません。

 

② 対策は、日頃の注意力が重要

 お客様の立場で考えて見ましょう。新聞の購読を止めるとき、突然その原因が発生して中止になるのでしょうか。ほとんどの場合そうではないでしょう。

 たとえば、突然目が悪くなって新聞が読みにくくなるでしょうか。定年退職や単身赴任が突然来るでしょうか。そうではありません。従って、お客様は事前に新聞購読の中止を考え、検討しているはずです。目が悪くても新聞の情報が必要と考えれば中止になりません。定年退職も新聞情報を仕事のために100%使っていたというなら別ですが、趣味や家族のために使っていたのなら止めるべきか否か検討するでしょう。

 このようにお客様が新聞購読の中止を検討しているときに、その情報を掴むことができれば中止を防ぐことができる可能性が高くなります。つまり、中止になってから購読の再開を促すよりも中止にならないように働きかける方が、購読していただける可能性が高いということです。

 

③ お客様の出すサインを察知しよう

 お客様が購読の中止を考えていることを察知し、中止にならないように働きかけができれば引続き購読していただける可能性が高くなると説明しましたが、お客様が購読中止を考えているときには、何らかのサインが出ているはずです。

 そのサインを掴むことができれば対策を打つことができ、購読を続けていただけるということです。お客様が考えている購読中止理由ごとに、そのシグナルも違います。中止理由ごとに説明していきます。

 

④ 日常対策と中止後の対策

 ②で説明したとおり、お客様が中止を検討しているときに行う対策と、不幸にして中止になってしまってから行う対策があります。

 そこで、現読者対策を中止理由別に(1)日常対策と(2)中止後対策の2つに分けて考えていきます。

 日常対策とは、普段の作業の中でお客様が発するサインを掴む事です。集金や配達時、日常のあいさつでかわすお客様との会話の中でサインを探すのです。お客様との会話はとても大切です。情報を収集するという意識を持って普段の作業・会話をしましょう。

2 経済的理由

金銭にからむのでデリケートな対応が必要

 経済的な理由は、お客様にとってとてもデリケートな理由です。お客様の事情に入り込みすぎるのは禁物です。お客様の立場になって考え、お客様を傷つけることのないようにして営業しましょう。

 

① 日常対策

(1) サイン

 集金やあいさつ訪問時にお客様から「景気が悪くて給与が思ったように上がらない」「新築したのでローン出費が増える」「車を買い替える」「子どもが大学に進学する」「主人が定年になる」という話が出たら要注意です。

(2) 対策

 節約の第1位に新聞が上がらないようにしなければいけません。(1)のような話しが出たら、節約方法や経済動向を新聞記事の事例を挙げて話すことができれば最良です。さりげなく「昨日の生活面に上手な節約方法が載っていましたが、ご覧になりましたか」や「経済の状況を知るのに経済面が役にたつようですね」というように話します。

 

② 中止後対策

 日常対策をしていない場合、または不十分な場合、いきなり中止連絡が入り戸惑うことになります。「なぜ止まったの。大変!」とあなたの都合だけで、あわててはいけません。お客様の立場になって考えましょう。

(1) すばやい行動

 中止連絡が来たら、すぐにお客様の所へうかがって中止理由を確認しましょう。電話で中止連絡を聞いている場合もお客様と顔を合わせて直接理由を聞く事が大事です。「私どもに何か不手際でも有りましたでしょうか」と自分達のミスが中止になったのではないかと聞いてみます。わざわざあなたが尋ねてきて、自分達の不手際ではないかと心配している様子を見れば、お客様も本当の理由を話してくれるのではないでしょうか。

(2) 中止理由の分析

 中止理由だけではなく、お客様の表情や言葉尻、声の高低などで新聞購読を中止する緊急度や優先度を判断しましょう。新聞購読の中止だけではなく色々な節約をしていて、切羽詰っている様子であれば節約に役立つという紙面説明をしても逆効果になりかねません。お客様の立場になるというのは、ここでは紙面説明をしないで、お客様のおかれている状況に共感して「それは大変ですね。また、ご購読いただけるようになりましたら、私にお声かけください」と引き下がる事も大切です。

(3) 紙面販売

 「深刻な経済状況ではない」と判断したら、新聞が「節約」や「経済動向の把握」に役立つという紙面説明をしてみます。しつこすぎないように気をつけながら「近々再購読の可能性がある」のか「しばらくは購読にならない」のかを判断しましょう。その結果は、忘れずにリストに記録しておきましょう。

 リスト管理することで、「しばらくは購読にならない」が「もう少し経てば購読するかもしれない」となり、さらに「そろそろ購読するかもしれない」とお客様の気持の変化を明確にすることが可能になります。また、そうなるようにあなたが働きかけを行っていくのです。

3 新聞を読んでいる人がいない・いなくなる

誰が新聞を読んでいたのかがポイント

 新聞を読んでいたのは誰でしょう。家族全員が読んでいれば中止にはなりません。日頃の情報収集で誰が新聞を読んでいるのかを知ることが大切です。

 

① 日常対策

(1) サイン

 できれば「誰が新聞を必要としているのか」を確実に把握しておきたいものです。家族の中で一人だけが読んでいる場合は要注意です。それが転勤の可能性のある職業のご主人であれば赤信号です。他にも就職活動のためにお子様が読んでいて、他の家族は読んでいないというケースもあるかもしれません。一番多いのが、高齢者世帯でおじいさんまたはおばあさんのどちらか一方だけが読んでいるというケースです。この場合は、入院等で中止になる可能性が極めて高いお宅といえます。

 家族の「健康状態」や「職業(会社名)」という極めてプライベートな情報です。積極的かつ具体的に情報を得ようと話をしてはいけません。あなたが個人情報を探ろうとしているととられてしまいます。普段のさりげない会話の中で、お客様のほうからぽろりと漏らした情報をキャッチしてください。

 新聞を読んでいる人が「転勤(単身赴任)」や「入院」、不幸にして「お亡くなりになる」ということで、中止なるのを防ぐために普段からやれることがあります。それは、『ほかの家族にも新聞を読んでいただく』ということです。そのためには、家族の情報が必要です。集めた「職業」「趣味」「嗜好」などすべての情報を合わせて、この家族にあった新聞情報を考えてお勧めします。新聞の営業マン・レディーの腕の見せ所です。管理しているリスト情報を基に上司とも相談して対策を練りましょう。

(2) 紙面販売

 集金時やあいさつ訪問時に収集した情報を基に、家族一人々にあった紙面を紹介します。興味がありそうな記事であれば一番良いでしょう。

ア) 奥様

 子育てや教育、家事、健康、旅行やイベントなどに関する記事や折り込まれるチラシも紹介できるでしょう。

イ) お年寄り

 健康や年金、資産運用、シニア特集などの記事がお勧めできます。近年は、シニアを意識した記事や特集、コーナーが新聞には多く掲載されます。お勧めするのに困ることはないでしょう。

ウ) 子ども

 小中高にあわせた特集や記事がお勧めできます。新聞購読者数が減少する中、将来の購読者を見据えて小中学校の児童・生徒や高校生をターゲットにした記事やイベント、こども新聞、無料問題集などのサービスが新聞社によって展開されています。新聞本紙だけではなく、取扱紙が行っているサービスを普段から勉強して、お勧めできるようになりましょう。

エ) 趣味

 美術展やイベント、釣り情報、読者投稿、読書、TV特集など趣味に繋がる記事も多く掲載されます。趣味は、気軽にお勧めできる内容なので、「紙面販売」(第3章=商品知識=4取扱う新聞の特長を知る、5紙面販売とは?を参照)を意識して新聞を読み、そしてお客様にお勧めしましょう。

 

② 中止後対策

 不行にして読んでいる方がいなくなって新聞が中止になった場合は、残っている家族に読んでいただく働きかけをできるだけ早い時期にしましょう。上記(2)の紙面販売をして下さい。また、対象のお宅の家族や親戚、近所の記事が掲載されたら、試読紙を持って行き話題にして下さい。新聞購読に慣れていない方達は、身近な話題や趣味に関する記事の提供が効果的です。

 

4 新聞を読む時間がない・忙しい

状況変化をすばやくキャッチ

 この理由は「仕事が忙しくなり新聞を読む時間がとれない」等の状況変化による中止です。まさしく状況変化を事前に察知して日常対策を行っていれば中止になる可能性を低く抑えることができます。

 

① 日常対策

(1) サイン

 収集する情報は、「共働きか」「どんな仕事か」です。他にも朝刊配達時に自動車が止めてあったのに最近は無い。つまり出勤時間が早くなった。というように色々な方向から情報を集めます。

 もし、仕事がわかったら

 景気があまり良くない業界⇒忙しくない⇒中止にならない

   ※ ただし、「経済的理由」の対策が必要

 景気が良い業界⇒忙しい⇒中止になるかも⇒対策を検討

 仕事はわからないが

  出勤が早く帰りも遅い⇒忙しい

    ⇒中止になるかも⇒対策検討

  朝刊が抜かれていない⇒忙しい

    ⇒中止になるかも⇒対策検討

 集金時やあいさつ訪問で、さりげなく「景気はいかがですか」と聞いてみましょう。「忙しくて家のこともできなくて…」となったら黄色信号です。

(2) 紙面販売

 「忙しくて読む時間が無い」方にどうやったら新聞を開いてもらえるでしょう。答えは、休日など時間の取れるときに読める記事を紹介することです。

 天気予報やラジオ・テレビ欄は当日でなければ役にたたないのでお勧めできません。事件・事故や政治・経済、スポーツは絶対に当日でなければ役に立たないということはありませんが、できれば早いほうが良い記事です。反対に生活面や文化・芸能面、地域面は、早く知らなくても不都合の無い記事です。休日など時間の取れるときに読んでいただけます。このような記事をお勧めしましょう。

② 中止後対策

 「新聞を止めて下さい」と中止連絡が来るということは、既に忙しくて読めなくなっているということです。そうなってからでは、あなたが一生懸命に紙面販売をしても、「もう少し読んでみようかしら」と心変わりすることはないでしょう。さらに、お客様は忙しいのですから面談するのも難しいはずです。紙面販売すらできないかもしれません。

 しかし、諦めるわけにはいきません。なんとかお会いして以下のように勧めてみてください。この程度であれば、嫌がられる事なく話を聞いていただけて、検討してくれるかもしれません。

・ とてもお忙しいようですね。お読みいただける時間は作れませんか。

・ お休みはお取りになれますか。決まった曜日ですか。

・ お買い物をまとめてしなければならないようでしたら大変ですね。折込チラシで安いお店を探してみてはいかがですか。

・ 生活・文化・地域面は、地元の情報や趣味、お仕事、教育に役立つ情報が掲載されます。まとめて読むのは大変かもしれませんが、お休みの日にさ~と目を通すだけでも新しい発見や役に立つ情報に出会えるかもしれませんよ。

 

5 インターネット情報で十分

ネット情報で満足できるのか?

 この中止は、現在新聞を購読している方が、インターネット情報で十分満足できるから新聞の購読は止めるというものです。インターネットで情報収集している方に、新たに新聞を購読してもらうというのとは違います。新聞とはどういうものかは十分に理解されているお客様です。

 

① 日常対策

 本当に「インターネット情報だけで十分で新聞は必要ない」のか、或いは「インターネット情報ではやや不足はあるものの、経済的理由等ほかの理由とあいまって新聞の購読を止めざるを得ない」のか、というように止める度合いを知る必要があります。

(1) サイン

 サインとしては、ネット通販で買い物をしているネットで調べ物をするネット情報は早くて便利コンピュータを買ったスマートフォンに替えたというものがあります。お客様との会話であなたの方から「ネットは便利ですね」と自ら話題を出すのも良い方法です。その会話次第では、お客様のインターネット依存度がわかるはずです。

 新聞の情報とインターネットの情報は別物と考えているお客様は安心です。逆に「新聞と同じ情報がインターネットで見ることができる」や「インターネットの情報は早い」という話しが出たら黄色信号です。集金やあいさつ訪問時の会話から推察してみて下さい。

(2) 紙面販売

 インターネット情報といっても有料のものと、無料で見ることができるものがあります。新聞社が提供する有料の新聞サイトとの契約を理由に新聞の購読が中止になるのは、他紙を購読するため取扱紙を中止するという理由とおなじ事です。したがって、ここでは「無料で見ることができるインターネット情報」を理由に新聞購読が中止になるケースを考えます。

 そこで、a)インターネット情報だけでは物足りない方とb)インターネット情報で十分な方を分けて紙面説明について考えてみます。

a) インターネット情報だけでは物足りないと思っている人

 新聞情報の必要性は十分にわかっている方です。新聞情報とインターネット情報は別物で新聞情報は必要ということを説明しましょう。

○ インターネットニュースの良い所を知る

 新聞の良い所は、「第1章 2 新聞の魅力」で紹介しましたが、インターネットニュースの良い所はどこでしょう。第一に「速報性」です。常にニュース速報が見られるという点です。第二に「色々な発信元のニュースが見られる」ということです。新聞社だけでなく、テレビや雑誌、ネットメディアなどがニュースを提供しています。また、知りたいニュースを検索することができます。このようにインターネットニュースの良い所を知っておく事も大切です。

※ ただし、インターネットにはニュースとは別に、

 取材力や裏付けに関する信頼度に疑問がある情報も含まれています。中には、提供者が個人というものもあります。

○ 地元ニュースは新聞のほうが充実

 新聞特に地方紙の地域ニュースはとても充実しています。おそらくそのほとんどは、インターネットでは見ることができないものでしょう。お客様にとって一番身近なニュースは、インターネットでは読むことのできないニュースということになります。

○ 生活面も強みのひとつ

 生活面をインターネットで見ることは、ほとんどできないでしょう。新聞特有の記事ということです。地域医療情報やイベント情報など身近で役立つ情報を得ることができます。

○ 思わぬ記事を発見!

 インターネットは画面の面積に限界があります。新聞のように見開いて紙面全体を見渡すことはできません。表示されている見出し数本だけしか目に入ってきません。紙面全体を見渡す事ができ、思わぬ記事を発見することができるのも新聞の良い所です。

○ 紙面広告も情報源

 記事と記事の間や紙面下の広告はちょっとしたコーヒーブレイクといったところでしょう。今、世の中では何が流行っているのかがわかり、旅行や食品広告では季節を感じることもできます。一方、インターネットの広告は、購入した商品や検索したワード数を基にインターネットを使う人の好みに合った広告が掲載されます(※PCの設定により異なります)。つまり、その人が興味をもっている物や事を中心に広告が掲載されているのです。広告ではありますが、偏った内容の広告を目にしているということになります。

○ ご近所やお友達、仕事先で同じ情報の共有が可能

 同じ銘柄の新聞であれば、新聞記事を共通の話題にすることが可能です。特に営業職の場合、話題作りに新聞記事を利用することは良くあることです。インターネットでは、なかなか共通の話題を見つけることは難しいでしょう。

b) インターネット情報で十分な方

 もともと新聞をあまり必要としていない方なので、上記a)のインターネット情報だけでは物足りないと思っている人に行うインターネットと新聞を比較する営業方法よりも、新聞の良いところだけを説明する方が効果的でしょう。新聞の良いところは、「89頁の3新聞を読んでいる人がいない・いなくなるの(2)紙面販売」と同じです。お客様の情報を収集して、お客様の興味に添った記事説明をしましょう。

 

② 中止後対策

 インターネットでは物足りないと思っている方は、不幸にして中 止になった場合でも、今まで説明してきた①日常対策と同じ働きかけをすれば概ね理解を示していただけるでしょう。問題は、インターネットで十分という方です。中止連絡が来る前に日常対策をすることが最良ですが、もし中止連絡が来てしまったら、上記b)と同様にお客様が興味ある紙面を説明して下さい。また、中止になってから1~2週間後に訪問して「新聞がお手元になくて寂しくありませんか(不便ではありませんか)」と声かけをしてみて下さい。このようにできるだけ早い時期に声かけをして、新聞のない生活の物足りなさや不便さに気付いていただけるように働きかけましょう。お客様が新聞のない生活に慣れてしまうのが一番問題です。

6 仕事を辞めたので必要なくなった

新聞は仕事だけに役立っているのでしょうか

 「仕事に必要だから新聞を読んでいた」ということなので、仕事以外でも新聞情報が役立つということに気付いていただけるように働きかけましょう。

① 日常対策

(1) サイン

 「家族の誰が何のために新聞を読んでいるのか」を知ることが重要です。ご主人が仕事のために新聞を読んでいるお宅で、ご主人が定年を迎えるという場合は、中止になるかもしれないと考えましょう。また、転職するという情報も要注意です。新しい仕事では新聞情報が必要ないということも考えられます。

 また、仕事のために新聞情報が必要というお宅は、その方の他に新聞を読んでいる人がいるかを確かめましょう。他の家族も新聞を読んでいる場合は、中止になる確率が低くなるからです。

(2) 紙面販売

 89頁「3新聞を読んでいる人がいない・いなくなる」の紙面販売方法と同じように対策しましょう。ご家族の趣味や嗜好を把握して、それに合った紙面販売をします。仕事以外にも新聞が役立つ事を普段からお伝えするということです。

 

② 中止後対策

 定年退職の場合は、「ご近所との情報共有」や「ご近所との話題作り」が新聞で出来ることを伝えてみましょう。実際に定年退職を機に近所の方が多く購読している銘柄に変更するというお客様がいらっしゃいます。変更の理由が「ご近所が○○新聞の記事を話題にしているが、その話題についていけないので」というものです。

 「仕事を辞めたので必要ない」という方へどのように話せば良いのでしょう? 一例を紹介します。

7 会社や図書館、近所の身内の所で読む

自宅以外で本当にゆっくりと読める?

 自宅で出勤前に新聞を読む、昼間に奥様がゆっくりと読む、帰宅してから読むというのと会社や図書館で読む、あるいは近所の身内に見せてもらうというのは同じことでしょうか。また、どこであれ新聞を読んでいるということは、「新聞が必要」ということです。上手に対応すれば、中止にはならないでしょう。

① 日常対策

(1) サイン

 自宅以外で新聞を読むようになるきっかけを日頃の会話の中から見つけましょう。

 例えば、 最近会社が新聞を取り始めた

  昼休みに新聞を読んでいる

  図書館に新聞が置いてあるのに気が付いた

  子どもが近くに引っ越してくる

  親に子どもの面倒を見てもらう

 この他にも「出産⇒里帰り」や「新築⇒実家に間借り」など関連するワードを見逃さないようにしましょう。

(2) 紙面販売

 自宅に新聞がないと不便=という説明が有効です。例を挙げてみました。

○ お仕事が忙しいと会社では読めないのではないですか

○ 必要な記事を切り抜いたりしませんか

○ 読み返すことはありませんか

○ 奥様(ご家族)がお読みになりませんか

○ ご自宅でゆっくりとお読みになりませんか

○ チラシは必要ありませんか(会社の新聞はお客様の住んでいる地元のスーパーのチラシが入らない)

 

② 中止後対策

 中止連絡が来たということは、既に会社や図書館で読んでいる、身内に見せてもらっているということです。早めに対応しないと自宅で読まなくても不便を感じなくなってしまいます。中止連絡が来たらすぐに訪問して、98頁の紙面販売をしてみてください。自宅に新聞がないことの不便さに気が付くかもしれません。

8 目が悪くて読めない

お客様への気遣いを優先しましょう

 健康上の問題です。無理に継続を勧めるのは控えましょう。読みたいけれどどうしても読めない。読むのが辛いという状況になっているのかもしれません。

① 日常対策

(1) サイン

年配のお客様との会話に注意しましょう。

○ 最近新聞の文字が読みにくくなった

○ 天気予報(あるいはTV欄)だけしか見ない

(2) 紙面販売

 「読みにくい」などのシグナルが出たら、拡大鏡を使って読むことをお勧めしましょう。もし、お店にお客様にプレゼントできる拡大鏡がある場合は、それを持って行き1週間後くらいに「いかがでしたか」と感想を聞いてみてください。「拡大鏡を使えば読めますよ」と一方的に押し付けるのは禁物です。感想を聞いてどのくらい読みにくいのかを判断して下さい。拡大鏡を使えばなんとか読めるのであれば、シニア向けの「医療記事」や「年金」「高齢者向け商品紹介」などの記事を勧めてみましょう。拡大鏡を使っても読みにくい場合は、紙面販売は少し控えましょう。他にご家族がいらっしゃれば、その方に向けた紙面販売をしましょう。

 

② 中止後対策

 中止連絡が来て、その理由が「目が悪い」ということであれば、拡大鏡を使って読んでもらいましょう。その上で「続けて読む」のか「中止する」のかをお客様に判断していただきましょう。

 目が悪いという身体的理由であることをしっかりと意識して、お客様を気遣うことを忘れないでください。「新聞が止まると困る」という気持が強いと、お客様への気遣いがなくなってしまい、それがお客様に伝わってしまいます。あくまでも目が悪いという事を気遣ってください。その気持は、必ずお客様に伝わります。気遣っていることが伝われば、お客様も購読を続けることについて前向きに考えてくれるはずです。

現読者維持対策について

 この章では、現読者が中止になる中止理由別に対策を紹介してきました。当然、ここで紹介した対策をすれば絶対に中止にならないということではありません。大切なことは、普段からお客様と会話を交わして、お客様の生活状況の変化、新聞に対する考えや要望などを把握することです。変化がなければそれに越したことはありませんが、もし変化が見られたらすばやく購読中止にならないように対策を行わなければいけません。最初に説明したように新規読者獲得は、とても大変な作業です。現在、お読みいただいているお客様に続けて読んでいただくことも新規読者獲得と同じくらいに重要なことです。

 ここで説明した対策は、どのお客様にも使えるというものではありません。お客様にあわせて会話の内容を変え、誰に会えば効果的なのか、訪問時間は適切かなどを考え、行動しなければいけません。それには、お客様はどう考えるのだろうとお客様の立場になって考えてみて下さい。お客様が嫌がらない方法を考えましょう。必要に応じて上司と相談して下さい。経験豊富な上司であれば、ここで紹介した対策以外にも効果的な方法を知っているかもしれません。

 現読者との普段の接触が大切な事を忘れないでください。集金、サービス品のお届け、チケットや刊行物の案内などお客様との接触機会を意識的に作ってください。そうすれば、自然とお客様との信頼関係が深まり、お客様情報を得ることができます。そんなお客様との良い関係をあなた自身も楽しんでください。

 

新聞営業ハンドブック2020=第7章《クレーム対応》

1 クレーム発生のメカニズム

2 当事者意識を強く持つ

3 お客様の話をしっかりと聞く

4 クレーム内容を確定させる

5 解決策・代替案を提示する

1 クレーム発生のメカニズム

なぜお客様はお怒りなのでしょうか?

 お客様がクレームを言うのはなぜでしょうか。当然、新聞本紙や販売店、スタッフなどに不満があるからでしょう。それは、ひとつの出来事に対していきなりお怒りになってクレームに繋がるのでしょうか。クレーム発生のメカニズムについて見てみましょう。

 

① クレームは花粉症

 クレームは花粉症が発症するのと似ています。花粉症はある日突然に発症します。それは急に花粉に身体が反応して発症するのではありません。花粉症はアレルギーの一種ですが、アレルギーには「アレルギーコップ説」というものがあります。身体をコップに見立てて、生まれつきの体質に大気汚染やストレス、衛生環境や大量のアレルゲン(アレルギーの原因となる抗原)が水のように増えていき、コップの水があふれるように身体の許容量を超えるとアレルギー症状が起きるというものです。

 クレームも同じです。例えば、朝刊が届かなかったとします。初めてのことであれば、お客様は電話連絡をして朝刊が届けばそれで納得するでしょう。クレームに発展することはないはずです。しかし、以前に朝刊が濡れていて読めなかった、バイクの空吹かしで音がうるさい、集金は日中にお願いしているのに時々暗くなってから来る…などいくつかの不手際が積もり積もってクレームに発生するのです。朝刊が届かなかったというのは引き金にすぎません。

 

② クレーム発生のメカニズムを忘れずに

 クレームは、積もり積もった不満が爆発して発生するものだということを忘れないでください。間違っても「不着を1回したくらいでそんなに怒らなくても良いのに」と思ってはいけません。今回は、不着に対してお怒りになっているが、これだけお怒りなのには理由があるはず…」と思うことが大切です。そう思うことで適切なクレーム対応ができるのです。その気持がないと、クレームがクレームを生んで、ハードクレームに発展してしまうということもあります。

 

③ クレーム対応で大切な4つの手順

 クレーム対応する際に大切なのが以下の4つの手順を踏むことです。72頁から詳しく説明していきます。

 

(1) 自分の不手際ではなくても当事者意識を強く持つ

     ↓

(2) クレームを言っているお客様の心情を理解していることをお客様にしっかりと伝える

     ↓

(3) クレームの内容・要望は何かをしっかり確認する

     ↓

(4) 解決策もしくは代替案をお伝えする

 

2 当事者意識を強く持つ

あなたは会社・店の代表です

 お客様は、あなたのお店が扱っている新聞、サービスに対する不満やスタッフに対する不満をクレームという形で表します。そのお客様に対して「その案件は自分の担当ではない」という理由で安易に対応者を交替することは禁物です。お客様から見れば○○新聞店のスタッフは「○○新聞の人」と考えるのは当然の事です。最初に電話に出た者あるいは応対した者がしっかりとお客様の話を聞くことからクレーム対応は始まります。

 

 名乗り

 お客様は、自分の不満をしっかりと聞いてもらい、納得のいく対応をしてもらいたいのです。従って、あなたが最初にやらなければいけないのは、お客様の話をしっかりと聞くということです。

 そこで注意するのは、あなたが「どこ」の「誰」なのかを名乗る事です。お客様は、自分の不満を聞いてもらえる相手なのかをあなたの名乗りを聞いて判断します。あなたが名乗ったあとにお客様が不満を話し始めたら、お客様はあなたを自分の不満を聞いてもらえる相手だと判断したことになります。

 

3 お客様の話をしっかりと聞く

お客様の心情を理解しましょう

あなたが誰なのかを名乗ったら、次ぎはヒアリングです。

 

ヒアリング

 お客様が不満を話し始めたら、お客様の話を最後までしっかりと聞きましょう。お客様の話が「自分の担当ではない」「自分では判断できない」という内容であることがわかってもお客様の話を途中で遮ってはいけません。

 ただし、お客様の話をただ最後まで聞いていれば良いということではありません。お客様は何に困っているのかをしっかりと聞いてください。あなたが対応する内容ではなく、別のスタッフが対応する内容でもしっかりと聞いてください。お客様の話をしっかりと聞くということは、お客様の心情を理解して、共感していることをお客様に伝えるということです。

 

(1) お客様にとっては大事なことという意識で聞きましょう

 自分の身内の話を聞いているという意識でお客様の話を聞いてみましょう。そうすることで心情を理解でき、また、お客様にはあなたが共感していることが伝わります。

  話を聞く際は、「共感」していることを伝えるために言葉で表しましょう。

「大変お困りなんですね」

「ご不便をお掛けいたしまして、誠に申し訳ございません」

「お時間を取らせてしまいまして、申し訳ございません」

上の共感を伝える言葉は「お詫び」の言葉でもあります。お客様にとってクレームを言うという行為は、時間と労力が必要です。そのことに対してお詫びをして下さい。「お詫び」と「謝罪」は別のものです。謝罪は、こちらにミスがあった場合に「謝る」という行為です。対して、お客様に時間を使ってクレームを言わせ、手間を取らせたことに対して行うのが「お詫び」です。

(2) お客様の話を最後まで聞きましょう

 「聞き役」ではなく「話させ役」というイメージで、お客様に声をかけながら聞いてください。お客様は、気持ちよく自分の言い分を話し、最後まで聞いてもらえれば、お怒り度はかなりレベルダウンします。決して、「言い訳」「お客様の間違いの指摘」「反論」をしてはいけません。

(3) 共感していることを示しましょう

 お客様の話に共感をして聞くということは、「態度」と「表情」と「言葉」で示すことです。

 ア) 態度

 お客様の苦情を聞くのですから、当然申し訳ないという態度でなければいけませ ん。お客様が話しているときは、「うなずき」ましょう。電話での受け答えで姿が相手に見えない時も「うなずき」ましょう。真摯な気持がお客様に伝わります。

 イ) 表情

 申し訳ないという表情が必要です。ニコニコ笑っていたり、苦情を言われて迷惑だという表情は絶対にNGです。

 ウ) 言葉

 共感していることが一番伝わるのが「言葉」です。お客様は、「自分の言っていることがきちんと伝わっている」と感じると怒りが少しずつ静まります。

 

あいづち

「よくわかります」

「ごもっともです」

「ご指摘いただいたとおりで

                                 ございます」

「お客様と同じ立場であれば、

 私も同じように感じると思います」    

復 唱

     《お客様》       《あなた》

 「△△だったのよ」⇒「△△なのでございますね」

 

4 クレーム内容を確定させる

何にお怒りなのかしっかり確定します

 お客様が何にお困りでお怒りなのかをしっかり確定させましょう。事象によって確定させる項目は異なりますが、概ね下記の内容を確定します。

① トラブル発生の日時

② どなたが不満をお持ちなのか

③ どのようなことが起こっていて、何にご不満なのか

④ あなた(新聞社・店)にどうしてほしいのか

 内容について、こちらから問い合わせる際は「恐れ入りますが」とひとこと添えて尋ねましょう。お話いただくことに恐縮しているという態度・意思が伝わります。

 聴き取る際は、必ずメモを取りましょう。

 お客様の常識とあなた・新聞社・店の常識が異なっていないかも注意して話を聞きましょう。

 内容の確認ができたら、お客様に上記①~④を復唱して内容確認してください。良ければ、これをもってクレーム内容の要件が確定できます。

 要件確定ができたら、次ぎは解決策または代替案をお客様に提示します。しかし、その前にこのクレームは、あなたの判断で解決できるのかをしっかり考えてください。責任者が別の人であれば、その人に引き継ぐ必要があります。その場合は、お客様にもしっかりと伝えて納得していただかなければいけません。

 他の人に案件を引継ぐ必要があるときは、お客様に以下のことをしっかりと伝えましょう。

① 案件の担当者は誰なのか

② いつ担当者に引き継ぐのか

 今すぐに引き継げない場合は、その理由を話す

③ いつごろお客様に解決策または

                                        代替案を伝えられるのか

 あなたが判断できない場合は、あなたが責任を持って担当者に伝え、担当者からいつまでに連絡させる旨を伝える

④ 担当者には、あなたが責任を持って引き継ぐこと

 

5 解決策・代替案を提示する

できることは約束をして、しっかり守る

 こちらのミスでクレームが発生している場合は、できるだけお客様の要望に応えられるように解決策あるいは代替案を示します。その上で、再度ミスが発生しないように対策をする必要があります。同じミスを何度も繰り返してはいけません。

① 店内でクレームを共有する

 発生したクレームを店内で共有します。ミスをした本人だけが再発防止に気をつけても他のスタッフが同じミスをしてしまう場合があるからです。クレームに基づいたミスを店内で共有して、ミスが発生しないためにはどうしたら良いのかをスタッフみんなで考えましょう。ミスをしないスタッフは既にその答えを持っているかもしれません。その答えを共有すれば、店全体で同じミスは発生しません。

② 解決策・代替案をお客様に伝える

 クレームにまでなったミスに対する対策は、必ずお客様に伝えましょう。「頻繁に不着がある」⇒「申し訳ありません。今後気をつけます」では、お客様は納得しません。①の例のように具体的な改善策を示すことで、お客様は理解を示します。また、「しっかりとした対策を店全体で取るすばらしい店だ」とクレームが好評価に変わるかもしれません。

③ クレームは顧客満足度を上げるための

               最善のVOC(Voice of Customer)

 クレームを発生させないように努めることは大切です。しかし、不幸にして発生してしまった場合は、これまで述べてきたようにお客様に共感しながら誠意を持って対応して、解決策を示します。それを店全体で共有して再発防止に努めます。

 この経験を積み重ねていく事でミスが減っていき、店の行うサービスの質が高まり、お客様に満足いただけることになります。お客様の満足とは、過剰なサービスによってお客様が気持ち良くなるということではありません。新聞が破損や汚損なく、毎日定時にきちんと届いて、集金も決まった日の決まった時間に来て、新聞社があつかうイベント等の情報を平等に提供される…という当たり前のことがミスやイレギュラーなく繰り返されることです。お客様からのクレームや要望など「お客様の声(Voice of Customer)」は質の高いサービスを提供するのに直接役立つものです。クレーム以外にもお客様から収集した意見は、店で共有してサービス提供に役立てて下さい。

 

新聞営業ハンドブック2020=第6章《お客様との話し方》

1 あいさつ、表情、姿勢

2 話し方

3 営業会話テクニック

4 信頼関係を築くコミュニケーション

1 あいさつ、表情、姿勢

面談の最初が肝心です

 わたしたちは、新聞の営業に行くのですからお客様に話を聞いていただかなければ仕事になりません。ドアの向こうのお客様は、話を聞いてくれる状況なのか、忙しくて聞いていただけないのかがわからないままチャイムを押さなければいけません。「こんな忙しいときに来て…」と言われるかもしれません。でも怖がる必要はありません。普通の営業会話ができればトラブルになることはありません。営業会話の基本中の基本を説明します。

 

① あいさつ

 お客様と最初にかわす会話は、「あいさつ」です。あいさつには「面談最初のあいさつ」と「終了あいさつ」があります。面談最初のあいさつはなんとなくわかるかもしれませんが、終了あいさつもとても大切です。たとえ断られてもお客様に不快な思いをさせることなく、再訪問できるようなあいさつができなければいけません。

 

 (1) 面談最初のあいさつ

 「あいさつ」+「名乗り」でお客様にあなたが誰なのかを認識していただくことができます。複合あいさつといいます。

《あいさつ》

・ おはようございます ・ こんにちは

・ こんばんは     ・ お世話になっております

《名乗り》

・ ○○新聞店の△△です

《複合あいさつ》

・ こんにちは。○○新聞店の△△です

とても簡単ですね。声を出して練習してみましょう。

 

(2) 終了あいさつ

 終了あいさつは、お客様とどんな話をしたのかによって変わってきます。

 

《あいさつ》

・ 感謝⇒本日はお忙しいところ有難うございました

・ 内容確認⇒本日は「…」についてご案内いたしました

・ 不明点の有無確認⇒ご不明な点はございませんでしょうか

・ 次回へのフォロー⇒何かございましたら連絡をください

・ お詫び⇒お役に立てず申し訳ありませんでした

※ 状況によっては上記以外にもあいさつがあります。

《名乗り》

・ 私△△が承りました。

・ 本日は△△がご案内いたしました。

《複合あいさつ》

 ・ 本日はお忙しいところ有難うございました。△△が承りました。

 

状況によって違ってくるので少し難しいかもしれません。実践経験を積んで覚えていきましょう。

 

② 表情

 表情はいうまでもなく「いきいきした顔」と「笑顔」です。表情が声色にも表れます。いきいきとした笑顔で発声することで、あなたはとても良い印象をもっていただけるでしょう。

 

③ 姿勢

 姿勢を正しましょう。たとえドアの向こうのお客様に見えていなくても正しい姿勢でいることで、これからお客様に営業をするというあなた自身の営業スイッチが入ります。

2 話し方

営業を意識した話し方をしましょう

 営業会話は、家族や友達と話すわけではありません。しかも商品を買っていただくお願いをするための会話です。日常会話とは違うということを意識してください。

 

① 聴き取りやすさ

 ・ お客様が聴き取りやすい声の大きさで話しましょう。

 ・ 口を開いて滑舌に注意して話しましょう

 お客様にあなたの言っていることが伝わらなければ意味がありません。お客様の表情に注意して「通じているのか」「通じていないのか」を見極めましょう。通じていないようなら、もっと口を開いて滑舌をはっきりさせてお客様に聞こえる声の大きさで話しましょう。

 

② 話すスピード

 ・ お客様のテンポに合わせて話しましょう

あなた自身の話すスピードがあるかもしれませんが、営業会話ではお客様のテンポにあわせて話しましょう。お客様は、自分のテンポで会話ができると気持が良いものです。

※ 一般的な会話速度は、1分間に約200字です。

 

③ 声のトーンとイントネーション

・ 強弱と抑揚をつけて話し方に表情をつけましょう

・ 強調したい部分にはアクセントをおきましょう

・ あかさたな…のあ段の開口を意識しましょう

 話し方が一定のトーンで抑揚がなくずっと一本調子だと事務的な印象になります。たとえば「申し訳ありません」とお詫びをしても気持が伝わらず謝罪していると思っていただけません。

④ 話し癖

 話し癖の中にはお客様にとって不快であったり、私たちに対して不信感をもたらすものもあります。営業では十分に気をつけましょう。

・ 語尾に気をつけましょう

 「~ますうー」「~でえー」というように語尾を伸ばすとお客様を敬う気持を感じません。とても失礼になってしまいます。

・ 口癖

 口癖には色々あります。お客様に不快な思いをさせないよう日頃から自分の話し方に気をつけてみましょう。たとえば「えー」が多い。「うん」とうなずく。などです。

 

⑤ 立ち位置と目線

 お客様と会話するときは、できるだけ正面には立たず少し斜めに立ちます。正面に立つと相手に威圧感を与えてしまいます。また、目線はできるだけお客様の目線に合わせます。最もやってはいけないのは、上から見下ろすことです。腰をかがめて目線を合わせましょう。

 

⑥ 話し方のポイント

 ①から⑤を踏まえて、話し方のポイントをまとめると次のようになります。

◎ 早口にならない⇒相手のスピードに合わせる

◎ 聴き取りやすく話す⇒相手の声のトーンに合わせる

◎ お客様の話を最後まで聞いてから話し始める⇒一方的に話したり、相手の話をさえぎらない

◎ 声に表情を持たせる⇒感謝や歓迎、共感、お詫びが伝わるようにトーンやイントネーションに気をつける

 

 たとえば、おばあちゃんと会話する場合は、腰をかがめて目線を合わせ、横に寄り添うように立ちます。そして、おばあちゃんの話すスピードと声のトーンに合わせて話します。あせらず、おばあちゃんの話を最後まで聞いて自分の話を始めましょう。

 

3 営業会話テクニック

ちょっとしたテクニックで好感度アップ

 営業会話に必要なことは、お客様を敬っていることを伝える。つまり「気遣っている」「立場をわきまえている」ことを伝える事です。

 

① 尊敬語・謙譲語・丁寧語

 尊敬語・謙譲語・丁寧語をきちんと使おうと意識しずぎると上手く会話ができず、自分の伝えたい事が相手に伝わりません。最低限、お客様に失礼にならないよう気をつけるように心がけましょう。

 尊敬語・謙譲語・丁寧語の「意味」「活用場面」「使い方の例」を簡単に整理すると下表のとおりです。

【注意点】

・ できるだけ多重敬語は使わない⇒×元気に旅行に出かけになられた

・ できるだけ多重敬語は使わない⇒○元気に旅行に出かけになった

 

※ 会話の流れで敬語が重なる事があります。あまり意識しすぎず、二重敬語までは不自然にならないので、問題ありません。

 

・ 動詞が続く場合は、最後の言葉を敬語にする。⇒×喜びになって帰った

                                                                                     ○喜んで帰りになった

・ 身内に敬語は使わない⇒×お父さんおっしゃるには

             ○父が申すには

・ 相手に謙譲語は使わない⇒×お客様が参りました

              ○お客様がお見えになりました

・ 「お」「ご」は、動植物、外来語、公共物、「あ」「お」で始まる言葉には付けない。

② やわらげ表現

お客様のご希望に添えない時やお客様に負担を強いる時に「やわらげ表現」を使うことで、お客様を気遣っていることが伝わります。また、丁寧な印象を与えます。

 

 (1) 肯定的に話す

「できない」ことを肯定的に話すことで受ける印象が大きく異なります。

× 本日、○○は外出しております。明日まで対応できません。

○ 本日、○○は外出しておりますが、明日は対応可能でございます。

× 担当ではないのでお答えできません。

○ 折り返し担当から回答させていただきます

 

(2) 依頼形を使用する

自分達の都合をお客様にお願いする場合、できるだけ命令的な表現は避けます。依頼形を使いましょう。

× 10日までに連絡して下さい。

○ 10日までに連絡していただけませんでしょうか。

× 集金に伺います。

○ 集金にお伺いしてよろしいでしょうか。

 

③ クッション言葉

 お客様に質問や依頼をするときにクッション言葉を使用すると、とてもソフトに受け止めていただけます。多様なクッション言葉は会話の広がりを増やします。営業にはとても役立つ言葉なので、マジックフレーズと言う人もいます。

 「お断り」や「依頼」の場合でもクッション言葉を使うことで、お客様に警戒感や不安感を抱かせずに心構えをしていただけます。

 

④ 伝える内容と順序

 お客様に対し依頼や否定的な事柄を伝える際に、言葉使いと同じくらいに大切になるのが内容と順序です。順序は、結論から伝え、次に理由、最後に感謝やお詫びの気持を伝えます。

⑤ NG言葉

 営業のときに使ってはいけない言葉です。お客様が否定的に捉えて不快になります。また、曖昧な印象を与え不安に思います。

 

《例題》次ぎの会話を正しく言い換えてみましょう。

 

 お客様:うちの主人は早朝出勤があるので、遅くても3時半までには朝刊を届けてもらいたい。

 あなた:○○さん要望に応えられるよう頑張りますただ、新聞が店に着くのが3時半を過ぎる場合は、4時過ぎになるときもあります   

 

ポイント:  の部分は適切なのかを考えてみましょう。

4 信頼関係を築くコミュニケーション

コミュニケーションで信頼を得る

 お客様とどのようにコミュニケーションすれば、信頼していただけるでしょう。2つの点に気をつけて会話をすれば大丈夫です。1つは「お客様の話を受け止める」もう1つは「お客様の話に反応する」です。

 

① お客様の話を受け止める

 あなたは普段、お客様とどのようなコミュニケーションをとっているでしょう。思い出しながら下表のどれに該当するか考えてみましょう。

 普段の会話から気をつけるようにしましょう。最初は、お客様の話を最後までしっかりと聴くことを意識しましょう。

お客様の話が理解できたら、復唱して正しくお客様の話を理解しているかお客様に確かめましょう。

 

② お客様の話に反応する

 表情や声のトーン、スピード、言葉を返すことでお客様に話をしっかりと聴いているということを示しましょう。

 共感しているという事を示す言葉には、どのようなものがあるでしょう。下の例を参考にして下さい。

 

◆ お客様が落ち込んでいるとき

「そうですか、ご不安でしたね」「それは大変お困りなのですね」「○○様が、がっかりする気持ち、わかります」

◆ 怒っているとき

「お怒りになるのも、ごもっともです」

◆ 喜んでいるとき

「そうですか、それを聞いて私も嬉しいです」「○○様は大変上手に活用されていらっしゃいますね」「それはさすがですね。そのような結果を出すには色々と苦労されたことでしょう」

 

《回答例》

結論:○○様のご要望にできるだけ対応させていただきます。

 

用件:3時半までの配達についてですが、大変申し訳ございませんが

(断り) 冬場の大雪の日など特別な日は、ご要望に添えない場合がございます。

 

理由:交通の状況によって新聞が店に到着するのが遅くなる場合があります。そういう日は、3時半を過ぎる場合があるかもしれませんが、できるだけ早くお届けするよう対応させていただきます。

 

感謝:ご迷惑をお掛けする場合もあると存じますが、何卒ご理解いただきますようお願い申し上げます。本日は有難うございました。

新聞営業ハンドブック2020=第5章《お客様に合わせた営業》

1 お客様を分類

2 新聞を読んでいないお客様への営業

3 他紙を読んでいるお客様への営業

4 取扱紙を読んでいるお客様への営業

1 お客様を分類

営業対象となるお客様を分類してみましょう

 新聞の営業と一言で言っても色々あります。たとえば、現在、新聞をまったく購読していないお客様への営業。自分の取扱っている新聞は購読していないが他の新聞を購読しているお客様への営業等々があります。まず、お客様をおおまかに分類してみましょう。

 

① 現在新聞を読んでいないお客様

現在、新聞をまったく読んでいないお客様にも、下記の2種類のお客様がいらっしゃいます。

(1) 新聞(取扱紙)を過去に一度も購読した事がないお客様

(2) 過去にあなたの販売店が取扱う新聞を購読した経験があるお客様。また、購読していない期間によって下記ア)、イ)に分けてみます。

 ア) 13ヶ月以上購読していない

 イ) 1年以内に購読を止めた

 

② 取扱紙以外の新聞を購読しているお客様

現在、あなたの販売店が取扱っている新聞以外の新聞を購読しているお客様にも、下記の2種類のお客様がいらっしゃいます。

(1) 今まで一度も取扱紙を購読した事がないお客様

(2) 過去に取扱紙を購読したことがあるお客様。また、取扱紙を読んでいた時期によって下記ア)、イ)、ウ)に分けてみます。

ア) 13ヶ月以上前に購読していた

 イ) 1年以内に読んだ事がある

 ウ) 取扱紙と他紙を交替で購読する

 

③ 現在、取扱紙を購読しているお客様。なお、お客様の中には購読契約期間が決まっているお客様と決まっていないお客様がいます。

48頁の①②③のお客様を図で示すと下記のとおりです。細かく分類されたⒶⒷⒸⒹⒺⒻⒼⒽⒾそれぞれのお客様ごとに行う営業内容は異なります。次頁以降で詳しく説明します。

2 新聞を読んでいないお客様への営業

新聞に興味をもってもらいましょう

 現在、どの新聞も読んでいないお客様を「無購読(むこうどく)」または「無読(むどく)」といいます。

 上記のようにお客様を3つに分類できます。ⒷⒸは新聞を読んだ経験がある方なので、ある程度新聞のことはわかっています。しかし、Ⓐのお客様は読んだ経験が無いので、新聞営業の中では最も難しい営業になるでしょう。

 

Ⓐ 購読経験の無いお客様への営業

新聞の良さや必要性を知っていただいて、購読をしてもらうことが目標です。新聞がお客様にとってどのように役立つのかを営業の中で理解していただくという作業になります。しかし、一度も購読経験がないのですから、新聞の読み方すら知らないかもしれません。社会人なのか学生なのか、年齢はいくつか、仕事は…、などによって、読み方や新聞の良さの伝え方も違ってきます。

 読み方は、第3章2新聞紙面の基礎知識で説明したように、「ページ全体を見渡して見出しを見る」「気になった見出しがあったらリードを読む」「さらに興味を持ったら本文を読む」という全体⇒見出し⇒リード⇒本文という読み方で、短時間で興味ある情報を収集できる事を伝えましょう。時間が無いので読めないというという方にもこの説明で良いでしょう。

 新聞情報が役立つというのは、前述のように年齢や職業によって異なります。第3章5紙面販売とは?を参考にお客様にあわせた記事をお勧めしましょう。学生の場合は、就職活動のために新聞で「希望する業界研究や企業研究をする」「景気状況を知る」「政治経済の動向を知り希望する業界は将来安定かを考える」などを説明します。実際の記事を見せて説明すればより効果的でしょう。

 

Ⓑ 13ヶ月以上前に購読していたお客様への営業

紙面改造でお客様が読んでいた当時の新聞と構成や特長が異なっている場合があります。Ⓐのお客様同様に第3章5紙面販売とは?を参考に紙面販売をしましょう。新聞の読み方については知っているので説明は不要でしょう。

 

Ⓒ 1年以内に購読を止めたお客様への営業

 お客様がなぜ購読を止めたのかを顧客リストを見たり、上司に確認しましょう。その理由に合わせた営業をします。後述する「第8章 現読者維持対策」の章を参考に営業して下さい。

 

ⒶとⒷのお客様と購読契約できた場合「新規契約」と言います。

Ⓒのお客様と購読契約できた場合は「起こし契約」と言います。

前回購読していた期間から1年以上間が空いているかが基準です。

 

※ 「新規契約」の考え方は、新聞社や販売店によって異なります。自分のお店の基準を把握しておきましょう。

 

3 他紙を読んでいるお客様への営業

取扱紙の良さを知ってもらいましょう

 新聞は読んでいるけれど、あなたのお店が取扱っている新聞以外の他紙を購読しているお客様を「未購読(みこうどく)」または「未読(みどく)」といいます。

Ⓓ 取扱紙の購読経験の無いお客様への営業

取扱紙がどんなものかを知っていただく必要があります。現在購読している新聞をずっと読んでいらっしゃる方なので、相当の努力と忍耐が必要になります。種まき⇒育てる作業で信頼関係を築いて紙面販売しましょう。

 

Ⓔ 13ヶ月以上前に取扱紙を購読していたお客様への営業

 なぜ、他紙に変更になったのか気になります。元々他紙の方が取扱

紙を読んでくれたのか。元々取扱紙の読者が他紙に変更になったのか

によって対応が異なります。このお客様も顧客リストや上司に経緯を確認して、こちらに不手際がなかったかを良く調べましょう。その上で第3章5紙面販売とは?を参考に紙面販売をしましょう。

 

Ⓕ 1年以内に取扱紙の購読を止めたお客様への営業

Ⓔのお客様同様に止めた理由を知ることが先決です。その理由に合わせた営業をしましょう。取扱紙に掲載されていない記事が他紙に掲載されていて、その記事が必要という理由であれば難しい営業になります。育てる作業をしてお客様情報をつかんで、お客様の状況が変わったときにすぐに刈取り作業に入りましょう。

 

Ⓖ 取扱紙と他紙を交替で購読するお客様への営業

定期的または不定期で取扱紙と他紙を交替で購読するお客様は、他紙と契約したことにより取扱紙が止まってしまうことがわかった時、新たに結んだ他紙との契約期間の後、ふたたび取扱紙を購読していただけるように、できるだけ早い時期にお願いに行くことが一番重要な作業です。このように、次に他紙を読むことが決まっているお客様と『他紙との契約が終了した後に取扱紙をふたたび読んでいただく契約をすることを「先付契約(さきづけけいやく)」または「先付(さきづけ)』といいます。

※ 契約をした月の翌月ではなく、翌々月以降から購読が開始する契約も

先付け契約と言います。

 

4 取扱紙を読んでいるお客様への営業

取扱紙を読んでいる方への働きかけも大切です

 取扱紙を読んでいるお客様を「現読(げんどく)」といいます。現読のお客様だからといって安心してはいけません。いつ中止になるかわかりません。

Ⓗ 現読で契約期間が特に決まっていないお客様への営業

特別なことがない限り中止にならないと安心してはいけません。お客様の状況は「いつ」「どのように」変わるかわかりません。集金時や情報提供時にお客様と会話をして、状況の変化がないかをつかみましょう。これも営業の一つです。詳しくは、後述する「第8章 現読者維持対策」の章をご覧ください。

 

Ⓘ 現読で契約期間が決まっているお客様への営業

契約期間が決まっているお客様なので、契約期間が切れた後に購読していただけるのかどうかを知る必要が有ります。①他紙との交替読者なのか、②交替読者ではなく、契約延長をしてくれる可能性が高いお客様なのか、③こちらの誠意が伝わらないと契約延長できないお客様なのかを知る必要が有ります。このお客様も普段から面談する機会を作って、早めに契約延長をしましょう。このような契約延長の事を「継続契約(けいぞくけいやく)」または「継続(けいぞく)」といいます。

 

新聞営業ハンドブック2020=第4章《新聞営業の基本》

1 営業フローチャート

2 リスト管理

3 種まき

4 育てる

5 刈り取る

1.営業フローチャート

新聞営業の流れを理解しましょう

 新聞の営業の基本は、訪問販売です。店舗に商品を並べて集客して販売するわけではありません。一軒一軒お客様のお宅に訪問して営業します。ちなみに新聞購読のきっかけには、電話セールス、ホームページからの申込み、来店申込み、電話申込みなどがあります。電話セールス以外は受身なので、こちらから行う営業ではありません。

 さて、新聞の訪問営業の方法は具体的にどのようにするのでしょう。特別な営業をするわけではありません。基本は、自分の取扱っている新聞を購読していないお客様に新聞を購読していただけるよう働きかけるという作業です。フローチャートで説明します。

~Step1事前準備~

 あなたが営業するエリアのお客様の情報を集めます。取扱紙を読んでいるお客様以外が営業の対象です。その営業対象のお客様が「新聞をまったく読んでいない」または「取扱紙以外の新聞を購読している」という情報をリストまたは地図に記入します。

~Step2種まき~

 まず、あなたが〇〇新聞販売店の営業をしている△△さんであることをお客様に覚えてもらいましょう。ですから、最初から「新聞はいかがですか」と新聞は前面に出さず、営業用のパンフレットなどを持参して「あいさつ回り」に重きを置いて回りましょう。訪問の目安は月に1回を基本にして、話しやすいお客様は頻度を多くしても良いでしょう。その中で、お客様の趣味や家族構成など会話の中で見つけた情報を集めていきましょう。

 

~Step3育てる~

 お客様の情報を基に紙面販売(第3章5参照)をしましょう。お客様の興味に合わせて記事を話題にします。たとえば、小学生のお子様がいるお宅であれば、その小学校が記事になったときに新聞を持って行き話をするという具合です。この「育てる」段階でも情報収集は忘れずに行いましょう。

 

~Step4刈取り(クロージング)~

 お客様に信頼していただける関係が築けたら刈取り作業に入りましょう。まず、7日間の試読を勧め、試読後に感想を聞きに訪問して、購読契約をお願いします。「刈取り」を行うことでお客様との関係にも一定の区切りがつきます。ダラダラ営業は禁物です。

2.リスト管理

顧客リストが命綱です

 Step1の事前準備で行うリストの作成は、とても大切です。情報が全く無い状態で営業に行っても、恐らく何の成果もないでしょう。例えば、以前に自分の販売店のミスでトラブルになったお客様とは知らずに営業に行ったらどうなるでしょう。トラブルをさらに悪化させてしまいます。トラブル情報を知っていれば、訪問時にまず「昨年は当店の間違いで大変ご迷惑をお掛けいたしました。」とお詫びから入ることができます。お客様の受ける感じは全然違うはずです。

 単に取扱紙を読んでいないお客様の名前をリストアップするよりもお客様ごとにわかっている情報を記入しておくとより役立つリストとなります。

 39頁は理想的な顧客リストの例です。上部に「区域」「購読紙」「取扱紙の購読経験」「氏名」」「住所」「電話番号」という基本情報があります。次に「訪問結果」が10回まで実績が記入できるようになっています。続いて「購読しない理由」と店内で共有する情報を記入する「自由記入」があります。これは前述したトラブルなどを記入しておいて、営業時に備えます。

 中段が「見込度判定表」で、お客様が現在どのくらい新聞を読む可能性があるかをAランク~Gランクまで7ランクにわけています。

 その次が家族構成です。例では「決定権の有無」や「年齢」「職業」「学年」「趣味」など細かく記入できるようになっています。

 最後がお客様から何をご購入いただいたかを記入するものです。取扱紙を購読していなくても、チケットや書籍を購入されている場合は、これを基に営業することができます。

 今回例にしているリストは実際にはPCで管理しています。従ってデータ処理によって、小学生のお子様がいてかつ取扱紙の購読経験者を一覧で呼び出したり、店の営業日に訪問する必要のあるお宅の一覧を呼び出したり、色々なことが出来ます。

3.種まき

最初の一歩は種まきから

 偶然、新聞を購読したいと思っている方が引っ越して来たというようなことがない限り、初対面で購読の契約ができるということはありません。従って、リストに基づく地道な種まきが必要なのです。

 

 37頁で説明したように、まずは名前を覚えていただくという気楽な気持でエリアを回りましょう。販売店では、営業用の冊子やチラシなどを用意しています。事前に中身を読んでおき、種まき=あいさつ回りの会話に役立てます。販売店が用意する営業用のあいさつ品は、私たちが営業しやすいように工夫されています。それを上手に活かすか活かさないかは私たち次第なのです。

 

 あいさつ回りの際の注意事項は以下のとおりです。

 

① 服装と身だしなみ

第一印象はとても大切です。会って1~2秒で第一印象が決まるとも言われています。第2章4「服装と身だしなみ」を参考に清潔で決められた服装で身分証明書を忘れずに出かけましょう。

 

② 自分は誰なのかをはっきり伝えましょう

訪問販売にはルールがあると第1章3で説明しましたが、身分証明書を提示して「氏名」「販売店名」「銘柄」「目的」をしっかり伝えましょう。そして「話を聞いていただけるか」了承を得ましょう。

 

③ 新聞の売込みはじっと我慢

   新聞を購読していただくために営業するのですが、あいさつ回りでは避けたほうが良いでしょう。初対面で自分が新聞の営業で回っていることは伝えてあるので、2回目以降は新聞以外の営業用品を上手に使って日常会話を楽しみましょう。

 

④ 自然の会話の中から情報を得る

お客様情報が営業に役立つことは、リスト管理の項で説明しましたが、無理に情報を聞きだそうとするのはNGです。無理に聞き出そうとすると間違いなくお客様に警戒されたり、不審に思われたり、場合によっては嫌われてしまいます。日常会話の中からお客様が「ぽろっ」と漏らした情報を逃さずキャッチしましょう。キャッチした情報はリストに記入する事も忘れずに。

 

⑤ 在宅情報も貴重な情報です

あいさつ回りの時、不在で情報が得られなかったとがっかりするかもしれませんが、それは間違いです。訪問した「日時」「曜日」をリスト管理する事で、同じ曜日の同じ時間に訪問しないということも計画的な営業ということがいえます。「〇曜日」の「△時」に決定権者(契約するか否かの決定権を持っている方)に面談できたという情報がリスト管理されていれば、無駄足を踏むことなく効率的な営業ができます。

 

⑥ 訪問時期はお客様に合わせて変えましょう

あいさつ回りは1ヶ月1回を基本と前述しましたが、あなたの訪問をあまり歓迎していないお客様で、1ヶ月1回の訪問を嫌っている様子がある場合は、訪問期間を長くする必要があります。

 

⑦ 育てる作業に移行する時期は

お客様にあなたが○○新聞の営業マン・営業レディーであることが認知してもらえれば「種まき」から「育てる」作業に移りましょう。訪問の経緯を販売店の上司に報告して「育てる」作業に移るか否かを相談しましょう。

4.育てる

新聞に目を向けさせる大切な作業

 種まき=主にあいさつ回りは、名前を覚えていただくという気楽な気持でと前述しましたが「育てる」は、そういうわけにはいきません。育てるという段階で取扱紙を知っていただき、興味を持っていただくところまで持っていかなければいけません。私たち営業職の腕の見せ所です。また、この育てる作業が一番時間のかかる作業になります。数年あるいは十年以上かかる場合もあります。

 

① 種まきから育てるへ

種まきからどの段階で育てる作業に移行すれば良いかは、41頁で説明したとおりあなたが新聞の営業をしているということを認知していただいた時点で移行します。営業に慣れるまでは、訪問結果をリスト記入しながら上司に報告して、育てる作業に入るか否かの判断を仰ぎましょう。一般的には、お客様にしっかり顔と名前を覚えてもらったら育てる作業に移っても良いのではないでしょうか。

 

② 紙面販売を意識する

  第3章=商品知識=で説明したとおり、紙面販売を意識して営業しましょう。お客様のご家族やご近所、お住まいの町内の記事が新聞に掲載された場合は、逃してはいけないチャンスです。新聞を持って行き記事を基に会話をしてみましょう。

新聞にお客様に関係する記事が掲載されるということは、そうはないことです。ですから、普段はお客様情報を基に営業します。「趣味」「職業」「家族構成」などの情報です。野球好きなら御ひいきのチームが勝った翌日に訪問してその記事を話題にする。小学校の先生なら教職員異動が掲載された新聞を持って行く。お年寄りと同居ならシニア関係の記事を話題にする。という紙面販売です。

 

③ 強弱をつけた訪問をする

 育てるのは時間がかかると説明しましたが、それはお客様ごとに「新聞の必要性の度合い」「新聞という商品をどのくらい理解しているのか」「銘柄へのこだわりがあるのか」「経済的に新聞の優先度は他の生活用品と比べて上なのか下なのか」など状況が違っているからです。また、毎回「紙面販売」をしてしまうと、お客様はあなたを新聞の契約だけを目的に訪ねて来る人と思ってしまうでしょう。育てる作業は、「紙面販売」⇒「あいさつ回り」⇒「情報提供」⇒「紙面販売」⇒「あいさつ回り」⇒「情報提供」というように強弱を付けて行いましょう。

 

④ 信頼され良好な関係を築く

 強弱をつけて育てる作業をすることにより、お客様はあなたを「新聞を勧めてくれる人」「いろいろな情報を持ってきてくれる人」「世間話の相手になってくれる人」という印象を持つでしょう。これを繰り返す事であなたはお客様に信頼され、お客様と良好な関係を築く事ができるはずです。

5.刈り取る

刈取り作業で区切りをつける

 さあ、いよいよお客様に契約をお願いする刈取り作業です。一般的にはクロージングとも言います。

 

① 刈り取るタイミング

お客様が「新聞を購読してみようかな」あるいは「銘柄を変えてみようかな」と思ったときがタイミングです。お客様との良好な関係を築き、信頼されていなければ契約をお願いするのは難しいでしょう。育てる作業で良好な関係を築いた上で会話の中でお客様の気持を読み取る事に努めましょう。慣れるまでは、そろそろ刈り取っても良いかなと思ったら、上司と一緒に訪問してタイミングを判断してもらうのが良いかもしれません。

 

② 試読から刈取りへ

刈取りをスムーズに行うためには「試読」をしていただき、その後に「刈取り」をするという方法が良いと思います。7日間試読をしていただき、試読後に訪問して紙面の感想をお聞きしながら契約を促します。感想をお聞きした上での契約のお願いなのでお客様も「もう絶対に来ないで」という拒否はしないはずです。お客様から「〇〇の情報が物足りない」や「△△については自分の意見と違う」という契約しない具体的な理由を聞くことができるでしょう。これは貴重な情報です。

 

③ 刈取り後の結果分析

契約できなかった場合は、お客様がなぜ契約しなかったのかを考えてその後の訪問時期や訪問頻度を決めましょう。お客様が明確にあなたが勧めた新聞自体に不満があるのであれば、すぐにお客様の気持が好転することはありません。新聞は気に入ったけれど別の要因で今回は契約できなかったということであれば、その要因がなくなれば契約が可能となります。

 

④ 刈取り作業で一区切り

刈取り作業をするまでに何年もかかることがあると説明しましたが、ダラダラと作業をすることは禁物です。育てるということは、刈り取れる状況を作る作業でもあります。刈取り作業を行うことで、「契約」あるいは「契約しない」という最終判断をしていただけます。最終判断をしていただく事で一区切りがつきます。「契約しない」場合は、今後どのようにお客様と接していくか販売戦略を立て直すことができ、またそれを行う区切りとなります。

 上記(例)の契約しない理由の分析は、「新聞本体」「折込チラシ」「その他」にわけています。契約しない理由が改善する可能性を○×△で示しました。注1の「×」は、改善の見通しが経たないので、しばらく紙面販売はできないという判断です。このお客様へは、紙面販売を行うのは難しいですが「あいさつ回り」「情報提供」はできます。あくまでも例示ですが、このような分析ができることを覚えておいてください。

 

新聞営業ハンドブック2020=第3章《商品知識》

1 新聞の種類

2 新聞紙面の基礎知識

3 新聞の価格

4取り扱う新聞の特徴を知る

5新聞販売とは?

1.新聞の種類

あなたが売る商品は“新聞”です

あなたがお客様に売る商品は“新聞”です。新聞にはどのくらいの種類があるのでしょう。ここでは、新聞の種類を学んで下さい。

① 一般紙とその他の新聞

各家庭に宅配される一般的な新聞を一般紙といいます。読売新聞や朝日新聞毎日新聞産経新聞中日新聞新潟日報などです。

それ以外では、スポーツニッポンサンケイスポーツ、スポーツ報知、デイリースポーツなどのスポーツ紙、日本経済新聞日経産業新聞日経MJなどの経済紙、各産業や業界専門の業界紙、競馬や競輪等のギャンブル関係紙、政党・政治関係の新聞、宗教関係の新聞があります。ひとことで新聞と言ってもとても多岐にわたっています。

② 全国紙とブロック紙、地方紙

一般紙をさらに種類分けをすると以下のようになります。

(1) 全国紙

国内すべてで発行されている新聞を全国紙といいます。以下の5紙が全国紙といわれています。

読売新聞、朝日新聞毎日新聞

産経新聞日本経済新聞

(2) ブロック紙

複数の都府県にまたがって発行されている新聞です。ただし、北海道はエリアが広いので例外です。

北海道新聞(北海道全域)、河北新報(東北6県)

東京新聞(関東1都6県と静岡県の一部)

中日新聞(中部地方7県)、中国新聞(中国地方4県)

西日本新聞(九州5県)

(3) 地方紙

県全域をエリアとする「県紙」と県の一部をエリアとする「県域紙」「地域紙」があります。

県紙のおもなものは、以下のとおりです。

新潟日報、上毛新聞(群馬)、北國新聞(石川県)

静岡新聞山陽新聞(岡山県)、愛媛新聞

熊本日日新聞沖縄タイムス

(4) 競合関係について

全国紙、ブロック紙および県紙は、各紙特徴はあるものの全国の記事や国際関係の記事が掲載される一般紙として競合関係にあります。

一方、県域紙や地域紙は県内の特定の地域情報が掲載されるもので、厳密には一般紙とはいえないでしょう。したがって一般紙と県域紙および地域紙は競合関係にはないといっていいでしょう。ただし、「全国ニュースは必要ない。身の回りの出来事だけわかれば良い。」というお客様に対しては、一般紙にとって県域紙と地域紙はライバルになります。県域紙、地域紙と侮ることなくしっかり意識することが必要です。

※ 新聞の種類の分け方には色々な考え方があります。ここで紹介

した分類

あなたがお客様に売る商品は“新聞”です。新聞にはどのくらいの種類があるのでしょう。ここでは、新聞の種類を学んで下さい。

① 一般紙とその他の新聞

各家庭に宅配される一般的な新聞を一般紙といいます。読売新聞や朝日新聞毎日新聞産経新聞中日新聞新潟日報などです。

それ以外では、スポーツニッポンサンケイスポーツ、スポーツ報知、デイリースポーツなどのスポーツ紙、日本経済新聞日経産業新聞日経MJなどの経済紙、各産業や業界専門の業界紙、競馬や競輪等のギャンブル関係紙、政党・政治関係の新聞、宗教関係の新聞があります。ひとことで新聞と言ってもとても多岐にわたっています。

② 全国紙とブロック紙、地方紙

一般紙をさらに種類分けをすると以下のようになります。

 (1) 全国紙

国内すべてで発行されている新聞を全国紙といいます。以下の5紙が全国紙といわれています。

読売新聞、朝日新聞毎日新聞

産経新聞日本経済新聞

(2) ブロック紙

複数の都府県にまたがって発行されている新聞です。ただし、北海道はエリアが広いので例外です。

北海道新聞(北海道全域)、河北新報(東北6県)

東京新聞(関東1都6県と静岡県の一部)

中日新聞(中部地方7県)、中国新聞(中国地方4県)

西日本新聞(九州5県)

(3) 地方紙

県全域をエリアとする「県紙」と県の一部をエリアとする「県域紙」「地域紙」があります。

県紙のおもなものは、以下のとおりです。

新潟日報、上毛新聞(群馬)、北國新聞(石川県)

静岡新聞山陽新聞(岡山県)、愛媛新聞

熊本日日新聞沖縄タイムス

(4) 競合関係について

全国紙、ブロック紙および県紙は、各紙特徴はあるものの全国の記事や国際関係の記事が掲載される一般紙として競合関係にあります。

一方、県域紙や地域紙は県内の特定の地域情報が掲載されるもので、厳密には一般紙とはいえないでしょう。したがって一般紙と県域紙および地域紙は競合関係にはないといっていいでしょう。ただし、「全国ニュースは必要ない。身の回りの出来事だけわかれば良い。」というお客様に対しては、一般紙にとって県域紙と地域紙はライバルになります。県域紙、地域紙と侮ることなくしっかり意識することが必要です。

※ 新聞の種類の分け方には色々な考え方があります。ここで紹介

した分類と異なる分類もあります。

2 新聞紙面の基礎知識

“新聞”はこんなふうに作られています

新聞紙面の構成は、概ね下のようになっています。覚えておくと営業をするときに役立ちます。

もちろん新聞ごとに構成は異なります。自分が販売する新聞を良く見てみましょう。

3 新聞の価格

新聞の価格は銘柄ごとに一律です

 新聞の価格は銘柄ごとに一律になっています。たとえば、全国紙の場合は、全国一律で都道府県ごとや離島で異なるということはありません。同じようにブロック紙はブロック内で一律価格、県紙は県内で一律価格になっています。

 

 一律価格や値引きの禁止は独占禁止法に違反することになりますが、公正取引委員会が新聞などの特定の事業分野を具体的に告示によって指定して例外を認めています。新聞の場合は、「新聞業における特定の不公正な取引方法」として指定されていて、通称「新聞特定指定」と呼ばれ新聞の値引きなどが禁止されています。山間僻地や離島への配達にかかる費用を購読料に上乗せできないという決めです。全国または県内どこでもおなじ銘柄の新聞であれば、同じ価格で読めるということです。

 

 ただし、学校教育教材用や大量一括購読者用、長期購読者用、前払い購読者用など多様な定価を設定しても新聞特殊指定上問題はありません。

 

 新聞の価格は、月ぎめの定期購読者用とコンビニエンスストアや駅売店などで購入する1部売りとでは異なります。月ぎめの価格が1部売り価格よりもお徳に設定されているのが一般的です。

 

 あなたが扱う新聞の価格をしっかり把握して、営業時には迷うことなく、正しくお客様にお伝えできるようにしておきましょう。また、支払い方法も「集金」「口座引落」「クレジットカード」などいくつか種類があります。こちらも覚えておきましょう。

4 取扱う新聞の特長を知る

あなたの新聞の“売り”は?

 あなたが売る商品は新聞です=と既にいいましたが、その商品の特徴を知っていますか。自動車のディーラーは、来店したお客様に新車の特長、特に優れている装備を熱心に説明するでしょう。お客様から質問されれば、わかりやすく的確に答えるでしょう。新聞も同じでなければいけません。あなたは、自信がありますか。取扱い銘柄の特長を知る方法を紹介します。

 上の表は、ある地方紙と全国紙3紙の記事内容別の頁数を調査したものです。ある時期の2週間を調査して、1日の平均頁数に割り戻した数字です。たとえば、地方紙Nのスポーツ記事は平均2.8頁のボリュームで掲載されていたということです。

 

 各紙の記事内容別の頁数を比較する事で、どの新聞社がどの種類の記事に頁を割いているのか、つまり力を入れているのかがわかります。単純に頁数が多ければその種類の記事に強い新聞社とはならないかもしれませんが、新聞の営業をする際の参考には十分になると思います。

 

 それでは、上の表から得意分野つまり長所と不得意分野、短所をみてみましょう。

 

 地方紙Nは、圧倒的に「地域面」に力を入れていることがわかります。平均で5.5頁を使って情報提供をしています。次いで社会面も3.6頁と他の3紙に比べ約1頁多く力を入れていることがわかります。一方、国際面は1.0頁で4紙中一番少なくなっています。国際記事は弱いとみられるかもしれません。

 

 このように自分の取扱う新聞の長所・短所を知ることは、積極的に勧められる分野とそうではない分野を明確にして営業ができるということです。また、ライバル紙の読者がなぜその新聞を読んでいるのか予測することができます。営業時には、ライバル紙の長所を褒める事で、お客様との会話が弾むこともあるでしょう。

 

 この調査をするのは、一人では難しいかもしれません。販売店全体で役割を決めて調査してはいかがでしょう。

 

 漠然と感じた取扱紙の良い点・悪い点を営業に使うのではなく、数字という具体的な根拠を基に自信を持って営業をしましょう。

5 紙面販売とは?

読者に合った記事を勧める

 

 上の表は、ある県紙を参考にした架空の新聞です。その新聞記事を曜日ごとにお勧めする対象読者別に分類してみました。対象読者は「お父さん」「お母さん」「中・高・大学生」「小学生」「シニア世代」です。

 たとえば、シニア世代にお勧めする場合は、「生活面」にシニア特集が組まれている火曜日の新聞を使って営業をすれば良いということがわかります。

 同様にお母さんなら火曜日に折り込まれる小学生新聞「なるほど」を子育て教育記事掲載の水曜日の本紙と一緒に持って行って営業をすれば良いとなります。

 新聞の営業では良く「紙面販売」とう言葉を聞きます。これは、取扱紙にはどのような「情報」が「いつ」掲載されるかを把握して、その記事は「誰」にお勧めできるのかを考えて営業する事です。

 このように対象となるお客様に合った記事をお勧めすることを「紙面販売」といいます。漠然と「新聞は就職・進学に役立ちますよ」と言っても、新聞の記事が具体的にどのように役立つのかがお客様に伝わらなければ意味がありません。

 30頁~31頁の表を使えば、曜日にあわせた営業計画を立てることもできます。前述したように販促日が火曜日ならシニア世帯へ、水曜日なら子育て世代へ営業する…という具合です。

 また、釣り好きのお客様には金曜日の釣り情報「フィッシング」が掲載されている新聞を試読紙として届けて、あとで営業に行くということもできます。同様に料理好きのお客様は「料理レシピ」が掲載される木曜日の新聞を、経済に興味があるお客様は経済面が充実している日曜日の新聞を使うということができます。

 28頁で説明したように自動車のディーラーが自分の扱う自動車のことを熟知しているというのは当たり前のことです。新聞を扱っている私たちは、扱っている新聞がどのような新聞なのかをしっかり理解しておく必要があり、それは当たり前のことなのです。28頁の表「記事種類別のページ数」で扱う新聞の長所・短所を知った上で、30頁~31頁の表「対象読者別の記事」を使ってお客様に合わせた営業をすれば、自動車の営業マン同様に取扱商品を十分に理解した営業つまり「紙面販売」ができます。

 紙面販売をするために、私たちはどのような新聞の読みかたをすれば良いのでしょう。当然、一般読者と同じように事件・事故や政治や経済の動向を知るために読むという普通の読み方が一つです。

 もう一つが、32頁で説明したように自分の取扱っている新聞を知るために読むということです。今日は何曜日だろう、総合面にはどんな記事が載っているだろう、生活面は、スポーツ面は…というような読み方です。

 さらにお客様を意識した読み方です。「今日のこの記事は、子育てをしている方達にお勧めできる」や「県内経済に興味を持っていたあの方にこの記事をお勧めしてみよう」といった具合です。

 お客様にお勧めする時は、記事の内容を勧める必要はありません。「何面に〇〇の記事が載っていましたのでお持ちしました。ご覧になってください。」という程度で構いません。お客様の政治に対する考えや宗教観、主義主張はわかりません。それらに反している記事を積極的に勧めていると取られないためにも深入りしたお勧めは避けましょう。

 

 私が新聞販売現場で作成した「紙面研究レポート」と「販促用冊子」の一部を紹介します。

◇ 紙面研究レポート

◇ 紙面比較調査レポート    ◇ 紙面改造調査レポート

◇ 夕刊紙面調査レポート    ◇ 現読者維持に関するレポート

◇ 取扱紙は本当に選挙に強いのか実証レポート

◇ 新学習指導要領を活かした増紙戦略について

◇ 学習指導要領改訂に伴う販促のポイント

◇ 新聞を学力アップに活かす方法

○ 販促用冊子

○ ご存知ですか?新学習指導要領により学校の授業が変わります

○ 新聞は、中学・高校受験や学力向上に役立ちます

○ 私は授業で“こんなふう”に新聞を使いました(教師OBより)

○ 『就活』新聞活用マニュアル

○ あなたも教員採用試験問題にチャレンジしてみませんか?

新聞営業ハンドブック2020=第2章《社会人としての基本とビジネスマナー》

第二章

社会人としての基本とビジネスマナー

1 社会人としての自覚と心構え

2 組織人として求められるプロ意識

3 書類作成は正確に

4 服装と身だしなみ

1 社会人としての自覚と心構え

知っておきたい基本中の基本

 新聞販売店で働くみなさんの大半が新卒採用ではない方達ではないでしょうか。別の仕事を経験してから新聞販売業界に入った方、子育てが一段落して新聞販売業界に入った方が多いのではないでしょうか。従って、新聞販売に関する新規採用者向けの研修を受けた経験のある方はほとんどいないと思います。新聞販売業界に入った時点では、すでに十分な人生経験をしており、新規採用者研修なんて今更…と思う方も多いのではないでしょうか。しかし、訪問販売の基本や電話応対時のことば遣い、報・連・相は何故必要か、組織の中での自分の役割など社会人、組織人として最低限知っておかなければいけないことは多くあります。一般的なビジネスマナーを「知る」「再確認する」ことは大切なことです。

 

① 会社から期待されていることは何でしょう?

 新聞販売店は組織です。性別、年齢、経験、価値観、家庭環境などが異なった人達が、新聞の増紙や維持、お客様への情報提供など同じ目的を達成するために集まった集団が新聞販売店という組織です。

従って、職場でのルールを守り、互いを尊重することが大切で、そうすることで人間関係が向上して販売店という会社全体として生産性が高まります。

あなたが会社から期待されていることは、会社の目指す目的達成のために職場の仲間と協調し、知恵を出し、話し合い、従業員が一丸となって業務遂行をしていくことができるよう中心的役割やその補佐を担っていくことです。

 

② 自分のことをしっかりコントロールできる人が社会人です

社会人・会社組織の人間として、しっかりと自己管理できることが大切です。具体的には、

ア) 健康管理…ローテーション職場では基本です。急な休みは厳禁。健康管理や前日の飲酒に気をつけましょう。

イ) 感情管理…好き嫌いを自己コントロールしましょう。社会人として同僚はもとよりお客様に対して好き嫌いを意識してはいけません。「仕事」と割り切ってけじめをつけることが必要です。

ウ) 時間管理…勤務時間を把握して遅刻やダラダラ勤務は避けましょう。時間ギリギリもNGです。

エ) 情報管理…会社やあなたが持っている・知っている情報は、「言わない」「見せない」「持ち出さない」を基本にして業務を行いましょう。

2 組織人として求められるプロ意識

採用された日からあなたはプロフェッショナル

 顧客満足度を常に意識しましょう。「どうすれば喜んでいただけるか」「なぜ上手くいかなかったのか」を追求することがプロ意識です。

 

① 役割意識

上司や同僚から期待されていることを自覚して、自分は何をすべきかを考えましょう。人任せでは成長はありません。

② 協力意識

会社が目指している方向を理解して、主任等上司の指示にしっかりと従い、チームワークを乱さないようにしましょう。新聞販売店に一匹狼は必要ありません。

③ コスト意識

あなたの人件費と使った時間は、契約や販売物、収集した情報などに対して「相当」なのか「効率が良いか」を考えてみましょう。

④ 目標意識

会社から与えられた目標とあなた自身が立てた目標をしっかり意識しましょう。目標を達成するためには何をすべきかを考えましょう。

⑤ 顧客意識

お客様の立場で考えてみましょう。

ア) 新聞は、遅配、誤配、不着、破損、汚損なく配達できて

いるか【注】

イ) 集金は、約束の時期・時間にうかがっているか。

ウ) 要望にすばやく・的確に応えているか。

エ) 明るく挨拶できているか。

以上のように新聞販売店顧客満足度を上げるためにできることは沢山あります。

 

【注】遅配:普段より送れて新聞が配達される

 誤配:違う銘柄の新聞が届く

 不着:新聞が届かない

3 書類作成は正確に

必要事項はきちんと記入しましょう

 わたしたちは、携帯電話やクレジットカードの契約をしたり、市役所に戸籍謄本取得の申請をしたり、自動車を購入したりする際に必要書類を作成します。その際、「氏名」「生年月日」「住所」「電話番号」「口座番号」等々必要事項をきちんと記入して申請します。新聞販売業務においても全く同じです。 購読契約書には、「銘柄」「購読開始日」「購読期間」「お客様の氏名」「住所」「電話番号」を記入していただき、私たち契約をした者の署名も残します。その他、新聞購読キャンペーンのプレゼント応募やイベントのチケット販売など必要事項を記入する業務は、新聞販売に携わっていると日々直面します。

 

 しかし、残念ながら必要事項が記入されていない場面に出くわすことが意外と多くあります。たとえば、「住所の市町村が省略されている」「郵便番号がない」「市外局番がない」「ふりがながない」などです。

 

 FAXで書類をやり取りする際に文字つぶれが発生する場合があります。もし、文字つぶれでお客様の氏名の判別ができない場合、ふりがながふられていれば正しい文字がわかるでしょう。お客様に不快な思いや失礼が無いように対応できます。

 

 また、お客様から問合せがあった時、そのお客様を検索するのに一番役立つのが電話番号です。現在は情報をPCデータ化しているのが常識です。お客様からの問合せに「氏名」や「住所」だと検索に時間がかかりお客様を待たせることになりかねません。最悪、検索できない場合もあります。電話番号であれば、すばやく正確に検索できます。

 さらに新聞発行本社は、契約書やキャンペーン申込書等みなさんが収集したお客様情報をデータベース化して、年齢別や性別の構成や地域的特色などを分析して販売戦略に役立てています。そのためには、きちんと必要事項が記入されていなければ役に立ちません。新聞の発行部数が本当に「0」にならないように、未来に向けて様々な販売戦略を立てる必要があります。その一役をみなさんが担っているということです。

 

 このように必要事項を記入するには意味があります。世間一般の企業の場合、記入漏れがあると上司からかなり強い叱責があります。なぜなら、必要事項を記入することは誰にでもできる基本中の基本であり、時には必要事項が記入されていないことが原因でお客様や関係する企業等に迷惑をかけることになりかねないからです。

 

 新聞販売業界だけがこんな基本的なこともできないということは無いはずです。必要事項の記入は、お客様のためであり、新聞が未来に向けて発行され、みなさんの生活を安定させるためでもあります。難しいことではありません。普段の仕事の中で意識して完璧な書類作成をしましょう。

4 服装と身だしなみ

見た目の印象は大切です

① 服装

 新聞販売店の作業は大きく分けて「配達」「集金」「営業」です。それぞれに適した服装で作業を行うことで、自分にとって安全で、お客様に信頼され、安心していただけます。

 

(1) 配達作業

 新聞の配達やデリバリーを行うときは、販売店で決められたユニフォームまたは指定された服装で行います。春夏秋冬など季節に応じて指定されている場合もあります。バイクや自転車で配達する際は特に軽快に動けるように服装や履物に気をつける必要があります。また、交通安全上識別されやすい服装であることも大切です。ユニフォームはそれらを全てクリアした服装といえます。

(2) 集金作業

 集金作業も販売店で決められたユニフォームまたは指定された服装で行います。お客様から現金をお預かりするのですから、○○新聞店の従業員であることがわからなければいけません。身分証明書を見えるように身につけ、ユニフォームを着用していれば一目瞭然です。ただし、新聞配達作業で汚れたユニフォームはNGです。集金時は清潔な服装着用に努めましょう。

(3) 営業作業

 営業時は、お客様に警戒されず、安心して面談していただける服装であることが大切です。清潔なユニフォームを着て身分証明書を身につけていれば大丈夫です。

 

② 身だしなみ

 身だしなみも基本的には服装と同様に清潔でそれぞれの作業にふさわしくなければいけません。髪型、ひげ、体臭(たばこの匂い)、くつの汚れなど社会人として常識ある身だしなみを心がけましょう。

あなたは、販売店・会社の顔です。お客様に「さすが○○新聞社の□□販売店の従業員」と思われるようにしましょう。

 

 

新聞営業ハンドブック2020=第1章

第一章

=業界の現状と営業の基本知識=

1 新聞業界の現状

2 新聞の魅力

3 訪問販売のルール

4 個人情報の取り扱い

 

1 新聞業界の現状

新聞業界の現状を知り、自分のおかれている立場を知る

 新聞の発行部数が右肩下がりに減少し始めてからかなりの年月が経ちました。活字離れやインターネットの普及などが理由に挙げられています。その検証例として下のグラフをご覧ください。

 棒グラフは新聞(一般紙)の発行部数です。2000年には122紙の一般紙があり、全体で4,740万部発行されていました。発行部数は年々減少して行き、2015年には4,069万部、2018年度には4,000万部を割ってしまい3,682万部まで落ち込んでいます。一方、折れ線グラフはインターネットの普及状況です。2000年の37.1%から2018年には79.8%と8割の方がインターネットを利用するまでになりました。二つを比べると新聞の発行部数の減少とインターネットの普及率がちょうど反比例していることがわかります。

 

 私たちが営業をする際に感じるお客様の厳しい反応は、このように実際の数字によるデータからみても明確で、新聞業界は大変厳しい状況であると言わざるを得ません。

 

 しかし、このまま新聞が無くなってしまうのかというとそうではありません。たとえインターネットが100%普及しても新聞を購読する方はいるでしょう。購読する方がいらっしゃる限り新聞は発行されます。新聞が発行される限り、私たちは営業をして、新聞を配達して、そして購読料を集金するという業務を続けていく必要があります。新聞の将来を悲観するより、新聞を必要としているお客様を増やし、また読者様を維持することで自分自身の仕事量を安定させることを目指しましょう。

2. 新聞の魅力

新聞の魅力を理解して営業に活かす

 インターネットが100%普及しても新聞の発行は「0」にならないと言いましたが、それでは新聞の魅力は何でしょう。それを理解すれば、新聞の営業も自信を持ってできるのではないでしょうか。

 むかしから言われている新聞の良い点は多くあります。そのいくつかを紹介します。

 

① 比較して記事を読むことができる

  新聞を広げて全体を見渡すと「見出し」が目に入ってきます。大きい見出しの記事は重要であることがわかります。見出しを見て興味のある記事や自分自身にとって大切な記事であることを判断する事ができます。また、目的の記事の横に思いがけず興味ある記事が掲載されていることもあります。

 

② スクラップをして記録することができる

 切り抜いたりコピーをしてスクラップすることができます。必要な時に取り出して読むことが可能です。小学生の自由研究にも利用されています。

 

③ 文章が正確で完成度が高い

記事を書くことを仕事にしている新聞記者の語彙力やことばの正確性は相当高いレベルにあります。また、新聞社内でのチェック機能が優れているので、発行された新聞の文章の完成度はハイレベルで正確といえるでしょう。

 

④ 文章をまとめる力を養う事ができる

新聞の記事は、「一文一義」で書かれていて理解しやすいと言われています。文章の「。」から「。」の間の一つの文章には、一つだけの事が書かれています。一つの文章の中に二つのことが書かれていないので、簡潔に読めて理解する事ができます。いろいろな新聞社がコラムの書き写しノートを出して、学生からお年寄りまで利用しています。書き写す事で更に要約力が高まります。

 

 以上4つ紹介しましたが、ある女子大学の女性総長やTV出演もしている有名私立大学の教授が①~④と同様の新聞の魅力や有益性を著書等で紹介しています。

また、受験、就職、仕事の場で必要な日本語を身につけるのに新聞が有効とも言っています。

 新聞には、このように応援してくれる著名人がたくさんいます。このような方々が新聞の有益性を紹介していることを知ると自信を持って営業する事ができるのではないでしょうか。

3 訪問販売のルール

最低限のルールを学ぶ

 新聞営業の基本は、「訪問販売」です。お客様のお宅に訪問して、新聞をお勧めします。この訪問販売には、「特定商取引に関する法律(以下特商法)」という法律で決められたルールがあります。最低限のルールを守らなければ、罰則規定があり、販売店や新聞の発行本社へ迷惑をかけてしまいます。最悪の場合は、あなた自身に罰則が適用されることもあります。これから説明するルールをしっかり守って営業しましょう。

 

① 自分が誰なのかをしっかり名乗ります

お客様に「身分証明書」を提示し、「所属」と「氏名」を名乗らなければいけません。これは、特商法第三条で決められています。

 

② 新聞の営業で訪問したことを伝えます

同じく特商法第三条で、「新聞の営業で訪問したこと」と「銘柄(新聞名)」を伝えなければならないことが決められています。

 

③ 営業の話をしても良いという了解を得ましょう

お客様に「新聞の営業をしても良いか」という了解を得ます。これも特商法第三条の二で決められています。

 

 ①から③を実際の営業の場面を想定して話すと以下のとおりになります。

あなた (身分証明書を見せながら)○○新聞、△△販売店の新聞太郎と申します。

あなた 本日は、○○新聞の7日間無料お試しのご案内でうかがいました

あなた お時間少々よろしいでしょうか。

 

どうでしょう。決して難しくはありませんね。お客様が「どんな話なの?」と話を聞く意思を示したら営業に入れば良いのです。ただし、「今は忙しい」「わかる者がいない」と言われたら帰らなければなりません。「帰ってほしい」と意思表示されたのに帰らなかったり、高齢者や未成年者など判断が十分にできない相手と契約をすることは特商法第七条で「迷惑行為」とみなされます。改善命令や業務停止命令という行政処分の対象となり販売店に迷惑をかけてしまいます。

 

また、「宅配便です」などと偽ってドアを開けさせたり、新聞の銘柄を偽ったり、契約期間やクーリング・オフについて隠して契約する。ドアを無理やり開けたり叩いたり、乱暴なことばをかける行為は、行政処分はもとより3年以下の懲役または300万円以下の罰金という厳しい罰則があります。

 

契約後は、新聞の銘柄、契約期間、金額など決められた事項をきちんと記載した書面(契約書)の控えを必ずお客様に渡さなければいけません。また、この書面(契約書)を受取った日から数えて8日間以内であれば解約することができることをクーリング・オフといいます。クーリング・オフについても正しく伝える必要があります。書面(契約書)に不備があったり、必要な記入事項が欠落していたり、虚偽(うそ)が記載されている場合は、行政処分の対象であるほか、100万円以下の罰金が科せられます。

 

懲役や罰金と聞くと恐ろしく思うかもしれませんが、お客様に迷惑や心配をかけないように常識をもって営業すれば何の心配もいりません。お客様の立場になって営業しましょう。

 

4 個人情報の取り扱い

業務上知り得えた個人情報の取り扱い

個人情報にも注意が必要です。2005年4月に施行されたのが個人情報保護法です。新聞の販売や配達、デリバリーのお届けなど新聞販売店の行う業務では、個人情報にふれる機会が多くあります。

 以下に新聞販売店業務であり得る場面を想定しました。どのように個人情報を扱えば良いでしょうか。「○」「×」で考えてみて下さい。

① 新聞配達中に「○○さんの家はどこですか?」と尋ねられ、すぐ近くなので教えた。

「○」 or 「×」

② お客様から他のスタッフさんにチケットをお願いしたいのでスタッフさんの電話番号を教えてほしいと言われ、携帯の番号を教えた。

「○」 or 「×」

③ 順路帳【注】は住所や電話番号が書かれていないので個人情報ではない。

「○」 or 「×」

※ 注:順路帳⇒新聞を配達する順番に「銘柄」や「注意事項」「家の特色」等が

記入されている帳面

④ 新聞配達中に家を尋ねられた。新聞配達用の色塗りされた地図を持っていたので、見せた。自分からは個別の家は教えなかった。

「○」 or 「×」

⑤ 新聞の期間止め【注】指示があったので、忘れないように「住所」

「氏名」を書いたメモをバイクに貼って配達した。

「○」 or 「×」

※ 注:期間止め⇒旅行や出張である期間留守にするため、その期間だけ

新聞の配達を止めること。

《答え》

① × … 相手は名前だけで家を尋ねたのに対し、あなたは家を教えました。○○さんの家の場所住所を漏洩した事になります。

② × … 同僚の情報も個人情報です。お客様へはこちらから折り返す旨を伝えましょう。

③ × … 名前だけでも個人情報です。順路帳の紛失には気をつけましょう。

④ × … どの家が新聞を購読しているかの特定ができます。セールスに悪用されるかもしれません。

⑤ × … 通行人が個人情報を目にすることができます。また、留守の期間が洩れてしまいます。防犯上とても問題があります。

 

新聞営業ハンドブック2020=はじめに~目次

新聞営業ハンドブック2020 ブログ公開について

 国家公務員を約20年勤めた後、家庭の事情で退職、地元へのUターンをきっかけに新聞販売業に身を置くことになりました。

 国家公務員として自動車行政や公正取引委員会事務局における調査業務等を行った後、まったく異なる新聞の販売業務を行うことになったのですが、当初の戸惑いは想像以上のものがありました。そのような状況におかれた私でしたが、諸先輩方や同僚、従業員の皆さんのご指導や助言、協力のおかげで定年まで勤めあげることができました。

 この間、私自身が経験した事、周りの方々からのご指導や教育等、多くを学んできました。それは、口頭や経験という伝承であり「新聞販売業務の基本」とは何ぞやというものがありませんでした。私は退職するにあたり、これらの経験、指導、教育等をまとめられないかと考え、ハンドブックにまとめることを思い立ちました。

 ハンドブックを2020年に完成させ、多くの方たちに呼んでいただきましたが、作成から3年が経過し、業界等の状況変化等もあることと思います。せっかくの「新聞営業ハンドブック2020」をさらに多くの方たちにご覧いただく最後のタイミングと考えて、今回ブログにて公開することにいたしました。

 時間の経過から資料の数字等タイムリーではありませんが、わずかでも新聞営業に役立つことがありましたら幸いです。

 何回かに分けての公表となりますのでお楽しみください。

著者

著 者 服部 巧 (はっとり たくみ)

本文・グラフ・図・写真・イラスト

 

◎ 1960年、新潟市生まれ。国家公務員として

運輸本省入省。大臣官房、自動車、物流関係

部局に勤務。公正取引委員会事務局出向。乗

合自動車(バス)担当を最後に約20年間の公

務員生活を終え、新潟へUターン。

 

行政書士を経て新聞販売業務に従事。地元

新聞社がお客さまセンター設置とともに転籍。

電話営業、増紙関連業務、お客様サービスを

目的とした倶楽部の運営、特産品販売業務、

従業員研修講師などを行う。2020年3月セ

ンター長を最後に定年退職。

はじめに

 縁があって40代になって新聞販売業に携わり、18年が経ちました。その間、多くの皆様からのご指導とご鞭撻により、ここまで勤め上げることができました。当初は新聞販売のいろはも知らず、失敗をし、結果を出せず、発行本社および販売店に数多くの迷惑をかけてきました。その後、販売店の組織変更や私自身の移籍、転籍という経験の中で成長することができたと実感しております。特に移籍した地区では、活発な活動をする主任会に参加させていただき、他店の様々な取り組みや積極的な地区会活動を目の当たりにし、そして自ら参加することで販売店とお客様が直接接することの重要性を強く感じました。また、学習指導要領の改訂で「新聞」が教材として使用されることになった際には、地区の主任が講師となって研修を行い、各販売店スタッフに営業チャンスであることを呼びかけました。元々他の販売店に出向いて行う交流拡張が盛んな地区であったため、営業の実践経験を積むのに苦労はしませんでした。私の現場営業の礎を築いたのがこの時期でした。

 

また、新聞販売業がおかれている状況を見ると「活字離れ」「インターネットの普及」と新聞に対する逆風は強くなるばかりです。あわせて、各店の労務は国内の経済状況の良し悪しに関係なく好転することはなく、決して魅力ある職場とは言えません。このような状況の新聞販売業界において働くスタッフのみなさんにやる気を出してもらうために、具体的な作業指示が出せないか、結果を数字で評価できないか、情報の共有化と利用価値の向上ができないか等を考えてきました。

 

その後、発行本社が「お客さまセンター」を新設するにあたり、初代メンバーとして全く新しい業務を行うという機会を賜りました。当初は、電話セールスを行い、その後地元の名品・逸品の販売を始め、増紙キャンペーン、会員制倶楽部の運営、無料問題集の配布等様々な業務が増えていき、お客様そして県下の販売店と直接関わる仕事をすることができました。中でも県内全てのお客様を対象として、生の声をお聴きする事ができるという経験は大変貴重なものでした。併せて販売店の意見や現状を知る良い機会ともなりました。このお客さまセンターの経験が販売現場で考えてきたスタッフのみなさんにやる気を出してもらう等々の課題解決に役立つ事に気が付きました。私の未熟な経験と考えではありますが、定年を迎えるに当たり、なにか形に残して新聞販売業務に携わるみなさんに伝えることはできないかを考えました。

 

そこで「新聞営業」に特化し、まとめたのがこの「新聞営業ハンドブック2020」です。これまで多くの営業マン・レディーが行ってきた営業方法を尊敬しつつ、その営業方法を分類しわかりやすく解説できないか、さらにその営業方法を未来に向けて改良し、効果が出せるものに発展できないかを意識してまとめました。できるだけ実践に役立つ内容になるよう心がけてまとめたつもりですが、多くの反論・ご意見がある事と思います。その点につきましては、私の未熟な経験と考えによるものとお許しいただけましたら幸いです。

 

また、この本は流通に乗せて販売することを目的としていません。従って、情報収集は私個人が行ったものを私自身が整理・確認したもので、データが古い等完全なものではない場合があるかもしれません。併せてご理解いただきたいと願います。

 

この本が少しでも新聞販売現場で役に立つ事を願いつつ、本書を進めていきたいと思います。

 

2020年3月

目次

はじめに ……………………………………………… 3

 

第1章=業界の現状と営業の基本知識=

1 新聞業界の現状 …………………………………… 12

2 新聞の魅力 ………………………………………… 14

3 訪問販売のルール ………………………………… 16

4 個人情報の取り扱い ……………………………… 18

 

第2章=社会人としての基本とビジネスマナー=

1 社会人としての自覚と心構え …………………… 22

2 組織人として求められるプロ意識 ……………… 24

3 書類作成は正確に ………………………………… 26

4 服装と身だしなみ ………………………………… 28

 

第3章=商品知識=

1 新聞の種類 ………………………………………… 32

2 新聞紙面の基礎知識 ……………………………… 34

3 新聞の価格 ………………………………………… 36

4 取扱う新聞の特長を知る ………………………… 38

5 紙面販売とは? …………………………………… 40

 

第4章=新聞営業の基本=

1 営業フローチャート ……………………………… 46

2 リスト管理 ………………………………………… 48

3 種まき ……………………………………………… 50

4 育てる ……………………………………………… 52

5 刈り取る …………………………………………… 54

 

第5章=お客様に合わせた営業=

1 お客様を分類 ……………………………………… 58

2 新聞を読んでいないお客様への営業 …………… 60

3 他紙を読んでいるお客様への営業 ……………… 62

4 取扱紙を読んでいるお客様への営業 …………… 64

 

第6章=お客様との話し方=

1 あいさつ、表情、姿勢 …………………………… 68

2 話し方 ……………………………………………… 70

3 営業会話テクニック ……………………………… 72

4 信頼関係を築くコミュニケーション …………… 76

 

第7章=クレーム対応=

1 クレーム発生のメカニズム ……………………… 80

2 当事者意識を強く持つ …………………………… 82

3 お客様の話をしっかりと聞く …………………… 84

4 クレーム内容を確定させる ……………………… 86

5 解決策・代替案を提示する ……………………… 88

 

第8章=現読者維持対策=

1 攻めの現読者維持対策 …………………………… 92

2 経済的理由 ………………………………………… 96

3 新聞を読んでいる人がいない・いなくなる …… 98

4 新聞を読む時間がない・忙しい …………………100

5 インターネット情報で十分 ………………………102

6 仕事を辞めたので必要なくなった ………………106

7 会社や図書館、近所の身内の所で読む …………108

8 目が悪くて読めない ………………………………110

 

第9章=転出・転入対策=

1 転出する方も大切な読者 …………………………114

2 転入にいち早く気付こう …………………………116

 

第10章=明るい未来に向けて=

1 販売現場の底上げ ………………………………… 122

2 データ活用の重要性 ……………………………… 128

3 顧客リストのデータ化 …………………………… 132

労務難を克服する ………………………………… 140

5 やわらか発想が未来を明るく …………………… 144

次回予告

 本文は、次回公開からになります。早めに公開いたしますのでよろしくお願い申し上げます。

半年間ありがとう!『らんまん』

いよいよ最終週

社会ズレしていない万太郎のきままで破天荒な生きざまに微笑みながら

夫に尽し、大胆な決断で大胆な行動に出る寿恵子に驚かされました

朝ドラ歴代トップクラスの「良妻」でした

半年間楽しませていただきました

俳優さん、脚本、演出をはじめとした かかわった全てのスタッフのみなさん本当にありがとうございました!

朝ドラらんまん 第25週「ムラサキカタバミ」

最終週に向けての第25週

4人の子供達も大きくなり、千歳は虎鉄と結婚

そんな時発生した関東大震災が槙野家の生活を変えてしまいます

寿恵子さんの内助の功と勇気ある大決断により、困難を乗り越えて行きそうな・・そんな最終週の予感です